第27話 不思議な関係
私の名前は夏樹みかん。
とあるアパートで一人暮らしをしている。
アパートには私以外にも住人が住んでいて、皆それぞれ豊かな性格を持っている。
住人同士は非常に仲が良いし、よく集まって宴会だのお話だのを繰り広げている。
入居したての頃はこのアパートで生活できるのかと考えたりもしたのだが、こういうアパートも悪くないと思うようになった。慣れって怖い。
そんなわけで、アパート生活を楽しんでいるがふと、実家に帰りたいなという気持ちが湧いてきた。
善は急げ。私は、スマホで夜行バスを手配する。ここらへんにはすんごいでかいバスターミナルがあるのでこういう時に楽だ。
夜行バスを手配し、実家にいる母親に電話をして少しばかりのお土産を買う。
あとは夜行バスが来る時間まで待機だ。
それにしても、久々に帰る実家というのはなんとも言えない気持ちになる。すっごい田舎だし都会色に染まった私を見たらどんな反応をするだろうか。
__________いや、都会色には染まってないよね。
そんなセルフのツッコミをしているとチャイムが鳴って誰かが部屋の前まで来ているようだ。
私がドアを開けると、そこには
「えりちゃん、どうかしたの?」
「いやぁ、最近いろいろたてこんじゃってさ、やっと一息つけたから遊びに行かない?って感じで」
「え、いつ?」
「いや、せっかくだから泊まり込みで」
「いやいや、家すぐ近くっていうかなんならおんなじ建物だよ?それに今夜はちょっと用事があって……?」
「そうかー。いつの間にか恋人がいたなんて……」
「あまって、恋人じゃない」
「違うの?」
「違うよ」
「え、じゃあ何なの?今夜用事があるって」
「実家に帰ろうかと思ってさ、バスをとったの。だから、今夜は遊べない」
「実家に帰るの?ついていこっか?」
「え、実家遠いよ?」
「みかんちゃんのお父さんとかお母さん会ってみたいからなー。それに、せっかくの休みなんだから旅行とか良いかもしれない」
「いや、けど……」
「お泊りセットも用意しちゃったことだし、ついていくだけでもついていくよ」
いや準備早いって。まあ、けどこうやって友達と実家に帰るなんてなかなかできないし、それに一緒の大学って言えば両親も友達関係は良好だって分かるかもしれない。
ここまで言われちゃったら断るのもなんだし、えりちゃんと一緒に実家に帰ることにしよう。
とまあ、そんな感じで夜行バスの隣にはえりちゃんが座っていて、夜の高速道路を走っている。
まあ、移動時間が10時間ほどあるわけだが、バスの中は静かでとてもじゃないがそれをきりだせる雰囲気ではなかった。
バスの揺れが段々と心地よくなってきて、いつの間にか私は寝てしまっていた。
私は眩しいので目を覚ました。
隣りにいるえりちゃんはまだ寝息をたてている。
外の景色はまさしく、海沿いを走っていてこのぶんだとそろそろ橋を超えそうである。
瀬戸内海に面した斜面に生えたみかんの木々と、美しい海を見渡すことができる、私の家はそんな県のまさしくみかん農家の家だった。
この橋は、その県と向こう側の陸とを結ぶ、そんな橋なのだ。
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