第21話 不思議な人達
「はぁ…こんなときに限ってあいつは寝ちまいやがって…」
暗がりの中、なれない手付きで彼女は絡まっていたケーブルをほどこうとしていた。こういうものは、すぐに絡まってしまいなかなかほどけない。
彼女としては力技でどうにかするタイプの方なのでこういった細かい事は苦手である。とくに、ケーブルなどの絡まりをほどくなんて彼女の専門分野外だ。
そして、彼女が「あいつ」と言っていたもうひとりの女性、
__________トラベレイターというのだが
は、ソファーの上で寝息を立てている。起こしてやってもらおうかとも思ったが、さすがに野暮だ。だからこそ、彼女は一人でケーブルと格闘しているのだが。
彼女はいきなり、なにかに気づいて後ろを振り向く。
「そこまで警戒しなくてもいいだろ…様子見に来ただけだ」
「ああ、麻か。そうでなければ首を…いや、冗談だ」
彼女はすぐに格闘していたケーブルに目を向ける。正直言って、むしろもっと絡まったような気がするが気のせいだろうか。
「あぁ、何をやってるかと思ったらケーブルほどこうとしてるのか」
「このケーブルをほどいてくれって依頼が来ててだな…勝手にほどくな」
麻の手にはすでに絡まっていないケーブルがあり、彼女が必死にほどこうとしていたケーブルは麻の手のひらの上に会った。
「いや、こういうのをほどくのは得意だっただけで…仕事のジャマだったか」
「そういうわけじゃ、ないがまあ、感謝はするよ」
「それで、だ。由岐には話してなかったがここのアパートだいぶ人数が増えたんだ」
「まあ上でどんちゃん騒ぎしているくらいからわかってはいたがな」
「それでな、できればその住人とも顔をあ…」
「却下だ。あまり人と会いたくない」
「そういうと思って、ちゃんと対価は支払うよ。おさつチップスって結構値段するんだな」
「いくら分買ったんだ?」
「一万六千円分くらいか」
「百袋じゃねぇかよそれ!」
と言いつつも、彼女の目は輝いている。なんなら、前のめりになってる。
「トラベレイターが起きるだろ?とにかく、これでどうだ」
「さすが、というしかないな。分かった。その話に乗ろう」
と彼女が言った所で、さらに別の方向から声が聞こえた。
「……………おはよう」
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