第16話 不思議な服装
そんなわけで、私と碧ちゃんはフードコートで税込み84円という、庶民派お手軽お菓子をつまんでいた。
時間的には食事の時間ではないため、人は少ないと思っていたが、そこそこ席が埋まっているというところに都会の凄さを感じる。
カニチップスを食べているのはさておいて。
「みかんちゃんってさ、その服どこで買ったの?」
いきなりすぎる質問。私は一瞬動揺するが、地元ではそこそこ大きいショッピングモールで買ったつもりだ。
「えーとね、サニモールの…」
「??どこそれ?」
「ん?」
マジか、知らないっぽいよ。私のいるような場所だったらサニモって言っただけで通じるし、むしろ尊敬の念で見られてたと思うんだけど…。
「ちょっとまって、どこから来たの?確かに、この辺の人間じゃなさそうではあったけど!」
「大体、夜行バスで十時間くらい?」
「どこかはわからないけどとりあえず遠いことはわかったよ!十時間って」
碧ちゃんが興奮気味に言うので、私は「遠いと大変だよー」くらいのかんかくで言っていたが、やはりど田舎は都会の人には受け入れてもらえないか…。
「夜行バスで十時間か…。きっと綺麗な景色が広がっているんだろうなー」
そう言われて、はっと地元を思い出してしまう。
実家はみかん農家だったから、バランスよく木が植えられていて、秋から冬になると一面オレンジ色だったりとか、少し歩けば海や島が広がっていて、あの島なに島かなーなんて言ってたりとか。窓を開ければ甘酸っぱいみかんの香りか潮の香りが太陽の光とともに入ってきたっけ。
久しぶりに親にメールでも送っておこうかな…。
「よーし、みかんちゃんそろそろ買い物するよ!」
そういった碧ちゃんの声でいきなり現実に引き戻される。
カニチップスはすでに食べ終わっていてゴミ箱に捨てられていたと思う。
「りょうかい!」
私はそういうと、碧ちゃんの後ろについていった。
田舎っていうとあんまり都会と比べると見劣りするけど、田舎は田舎で魅力があるんだな、なんて思うと少し自分が都会の人になれたような気がする。
それを都会で感じるなんて思いもしなかったけどね…。
「今度、みかんちゃんのお家にも言ってみたいな」
「いいけど、新幹線で4時間くらいかかるよ」
「新幹線通ってるんかい!」
そう言って私達は笑った。
ショッピングモールのざわめきに明るい声が混じっていった。
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