第14話 不思議な子育て2
誰かと思って後ろを振り向くと、そこには麻さんがいた。
「あーあ、昨日の夜は大変だった」
麻さんがため息混じりにそういったので、司がすぐさま
「何があったの?」
と聞き返した。
「ああ、昨日はモスカがすごく泣いたからあやしてやったんだが、全然泣き止んでくれなくて大変だったんだ」
「それって、麻が怖いからじゃないの?」
「司、ちょっと表に来い」
司は残念そうにモスカの近くから離れていったが、麻を見たときに少しにやっと笑ったのもわかった。
「それはそうと、寧さんくらいは起こしたほうがいいんじゃないですかね?」
そういったのはふみ。
たしかに、起こしたほうがいいかもしれない。もう十時過ぎになりそうだ。
しかし、それ以上に寧さんの寝顔が幸せそうだったので起こしたくても起こせない複雑な心境だ。
そして、結局先に起きたのはモスカだったというね……。
麻さんたちはたしかに表に出ていたのだが、おそらく肝心の壁の薄さをすっぽかしていたのだろう。
麻さんがいつものように言った
「雑賀ァ!」
は本日も音量は変わらず聞こえてきて、どうやらそれがモスカの耳に入ってしまったようだ。
モスカは目を眠たそうにこすったが、すぐに目が覚めたようで、周りをキョロキョロと見渡す。
そして、ふみの方へ向かって歩いてきた。
「わたし、モスカ。あなたはなんていう名前?」
いきなり過ぎてふみは少し驚いたようだったが、すぐに
「私は黒江ふみ。モスカちゃん、よろしくね」
と言ってにこりと笑みを浮かべる。
「そっか、じゃあ、ふみちゃんよろしくね!」
モスカはさらに笑顔でいうと、今度はこっちを向いていった。
「おねーさんのなまえは?」
いきなり飛んできたカーブ玉を私は受けきれずに落とすところだったが、ふみちゃん
が
「このお姉さんは、夏樹みかんさんって言うんだよ」
としっかりフォローを入れてくれたので私も微笑むことにした。
「みかんちゃん、よろしくね!ふたりともともだち!」
モスカはそう言って、もっと笑顔を返した。
一体この子はどういう子なのだろうかとかいう疑問は吹っ飛んでしまって、ただその笑顔が可愛いということになってしまった。
ちなみに、その後寧さんが起きて、食べ物は何が食べたいのかとモスカに聞いたら、ハンバーグが食べたいといういかにもらしい答えが帰ってきたし、それに生活の基本のことはちゃんとできる、割と手のかからない子だということもわかったのだった。
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