第11話 不思議な子供
一瞬の静寂。そして、混乱。
周りの住民たちは一斉に子供をみたが、子ども自身は自分に目線を向けられないため、キョトンと周りを見渡すしかなかった。
そして、ある方向へ目線をロックオンする。
「わ、わたし?」
そういったのはえりちゃんだった。えりちゃんと子供はすこしのあいだ見つめ合う。
そして、先に口を開いたのは子供の方だった。
「わたし、モスカっていうの。そのはだ、おいしそうね」
そう言うと、モスカはえりの鎖骨のあたりをがぶりと噛んだ。
その瞬間、我に返ったフレスが言う。
「まさか、モスコミュール・ニキーティチナ・スクラートヴァ=ヤガパンスカヤ嬢!?」
「何それ魔法みたい!」
「ちょっと何言ったかわかんない」
「暗記力う…ですかねぇ」
集団で我に帰った彼女たちは思い思いの言葉を発する。
しかし、そんな言葉よりもおらく重要な言葉を一部の人達は聞き逃さなかった。
「なんでわたしの名前知ってるの?」
そういったのはモスカ。
おそらく、モスコミュール以下略はモスカの名前なのだろう。となると、フレスがなぜそれを知っているのか。
「それで、その、なんでフレスが知ってるんだ?」
さすが麻さん。ちょっと躊躇していたところを迷いなく聞いてくれる。
「私にも良くはわかりません…。ですけど、どこかでお見かけした記憶が…」
フレスにもまだまだ謎はありそうだが、とりあえずはモスカだ。
モスカは、えりちゃんの首筋を甘噛していて、甘噛なのでおそらく痛みは感じないだろうが、流石にいきなり噛みつかれたら驚くだろう。
しかしすでにえりちゃんは手懐けたようで、モスカはえりちゃんの腕で寝ていた。
「どうします?」
そう聞いたのはふみ。
たとえ、えりになついたとしても、まだ未成年だ。流石に一日中面倒は見きれない。
どうしようか。
「学校にでも通わせておけばいいだろ」
そういったのは麻だった。
確かに学校に通わせるのはいいだろう。
しかし、この国にはいろいろしがらみという物がありましてね。
と思っていたが、さすが麻さん。
「養子にしたことにすればいい」と。まあ、…男性いないけどね。
そんな言葉は通用しないだろうが。
そんなわけでこのアパートに新しい住民が加わりました!
わけわからないよこんなの。
考えたら負けかもね。けど、楽しまないと!
そう言い聞かせて、私はなんとか平静を保ったのだった。
とりあえず、私達は寝ているモスカを起こさないよう、静かに部屋に戻った。
波乱万丈だね。このアパート。
と、言うわたしもそろそろ馴染みつつあった。
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