第9話 段ボールハウスに入ってやってきたアンディ(終・中)
雪がしんしんと積もる、その日
ぼくは待っていた
まよちゃん
厳しくて怖いけれど、うんと優しいお母さん
家族のリーダーのお父さん
みんながきちんと揃うのを
雪がしんしんと積もる、その日
ぼくは戦っていた
死神がやってくる
『お前はもうとっくに寿命なのだ。いつまで粘っている?』
天使がよかれと思ってやってくる
『虹の向こうに行けば、もう苦しくも辛くもないよ。若い身体に戻って、おいしいものを食べて、沢山駆け回れるよ。もう我慢しなくていいんだよ』
そんなのわかってる
でも、もうすこし
あと、すこしだけ
がんばらなければ。
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「アンディが来たのもこんな雪の日だったな」
お父さんがお酒を飲みながら話す
お母さんは「そうだったわねぇ」と言う
まよちゃんは「お母さん、おばあちゃんにすごく怒ったよね」と笑う
僕はかごのなかで、毛布にくるまって、うとうとと夢うつつに、僕のかぞくの会話を聞いている
「十六年間、いろんなことがあったなあ
アンディが居たおかげで、俺も、ママも、真世も、ずいぶん救われた。
ずいぶん頑張れた」
お父さんが言う
まよちゃんが固い声で「なんで過去形なの?」と、言う
お父さんが立ち上がった
ああ、この人は気づいていたんだ
「だからさ、アンディ。 もう、
いいよ」
もう、いいの?
ぼくは、ほっとして、
さいごに、一度だけ、空気を吸い込んだ
部屋の空気は温かったけれど、あの日と同じ匂いがした
うわー、白い! ちっちゃい! 可愛いー!
と、
ぼくを抱きしめた、まよちゃんに初めて出会ったときと同じ匂いだ
そうして、ぼくは、そっと目を閉じた
「いやだ! いやだ! いやだ!」
病院に連れて行く! と電話を手にとった、まよちゃんをお父さんが止める
「もう十分だろう」
許してやれ、と
お父さんは真っ赤な目をして言った
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