私はこうして死んでいた
私は裸で大の字に仰向けで倒れている。私を中心に血の海となっており、周辺も血の他にもいろいろな肉片が飛び散っている。その全ては私のものだ。
私の頭部は綺麗なままだ。肩までほどの髪は頭を放射状に広がっている。まるでぼんやりと空を眺めているような瞳、何か歌っているような口。頬はやや緩んで、前歯も中途半端に覗いているような状態だった。
私の喉は、鋭い刃物か何かで綺麗に裂かれていた。動脈のみ縦方向に切られており、呼吸器には血が流れ込まなかったようだ。まず首から切られたようで、ここからの出血が一番多い。血抜きということだろうか。切り込みは実に綺麗で、動脈の奥側にはまったく傷がついていない。
私の右腕は無くなっている。肉は鋭い刃物で一周回って切り取られ、骨だけのこぎりで削り折られている。肉の切断面は綺麗で、脂肪の層、筋肉の束、動脈、神経などが全部判別できるほどだ。それに対し骨の切断面はやや雑だと思う。無理やり削ったのかでこぼこしており、最後折った部分は斜めになっている。切られた腕はどこに行ったのだろうか、周囲には見当たらなかった。
私の左腕は、肩の関節の部分から、綺麗に肉が削ぎ落とされている。脂肪はもちろん、筋肉や腱、骨にこびりついた血すら綺麗にされている。肘や手首の関節も軟骨を残されているのみ。白い骨が肩から伸び、開いた手が何かをつかもうとやや丸まっていた。どうしてか手根骨のあたりも繋がったままだったが、その手が何かを掴むことは無いだろう。周辺には剥いだ皮や、削ぎ落とした肉、引きちぎった腱などが転がっている。
私の右足は、大腿部の真ん中辺りから下が潰されている。切断面は思ったより綺麗だ。流石に細かいところは判別できないが、脂肪の層、筋肉の束は見て取れる。ただ、裏側半分については、骨が折れるまで潰されていたようで、判別が難しくなっていた。骨は切断するというより、ぽっきり折れている感じ。断面は意外と綺麗だ。潰された足は流石に形は判別できなくなっていた。皮がべったりと地面にこびりつき、皮を突き破って脂肪と筋肉が周辺に飛び散っていた。その真ん中に粉々になった骨が見えている。細かい骨が密集している部分が膝とかかとだろうか。
私の左足は、奇妙なことになっていた。人間の歯型が複数箇所についており、犬歯がやや刺さり、その他の歯の部分は痣となって紫色になっている。ただ一箇所、噛みちぎるのに成功したのか、大腿骨の一部が白く覗いていた。断面は獣が食いちぎったよりさらに粗雑で、噛んだ方も顎が相当疲れたのではないか、という感じだった。
私の中では、腹部が一番酷いだろう。へそから脇腹にかけてが丸く吹き飛んで、辺り一面の地面にこびりついていた。大半は腸で、一部肋骨の砕けたものが見受けられる。断面も内臓部分のせいかはっきりせず、残った内臓がこぼれ落ちているようだ。判別できるのは大量の腸。それから覗いている腎臓はまだ無事だったらしい。そうすると横隔膜以上の肺と心臓は一応無傷なのだろうか。下腹部も割と無傷で……これは卵巣と子宮の端が覗いているのだろうか。そうするとその表側は膀胱か何か?
私の肉体の状況は以上、まるで上から眺めているかの状況だったが、私の意識もだんだんと薄れてきたようだ。皆様、さようなら。
殉死者たち FourRoses @FourRoses
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