火打ち石と煙管
─人が生み出す人工的な音が絶えない街。そこに立っていた。舌打ちをする音、何かから逃れるかのように夜の街を足早に戻っていく人。
中にはどうせ一晩だけの関係なのだろうか。お世辞にも似合ってはいない短いスカートと巻き髪の女性とスーツ姿の男。
あぁ、自分にもかつては隣を歩いてくれたたった一人の愛する人がいたというのに。
「どこへ行ったのですか・・・?煙管さん。」
私は、何年も・・・何年も待っているというのに。
私のあなたを呼ぶ声も、想いも、届かないのでしょうか。それとも・・・
「この時代にも貴方はいないのですか?
・・・日ノ本はあの頃よりもとてもいい国になった。遊郭制度も廃止された。・・・約束の条件は揃いました。」
ずっと、貴方だけを探しているのに。
考えても仕方ないことだとは分かっている。そうなのだ。
あの人はどうしようもなく、悪戯が好きで。いつも幼い少年のように邪気の無い顔で笑って、こちらの怒気を一瞬でどこかへ吹き飛ばしてしまう。
月並みに言うなら、大輪の向日葵や太陽を彷彿とさせる人なのだ。
きっと、いつかであった時にはまたその眩しすぎるほどの笑顔を見せてくれるんでしょう?
「今度こそ、絶対に側を離れません。
・・・だから、いつでもいいのです。此方はいつまででも待ちます。そう約束しましたから。」
どうか、またその笑顔と姿を私の脳に焼き付けて。
そう強く願っていればいつか再会出来る日があるのではと思えて。
口角が自然と自然と上がった。
さぁ、
付喪神で、不老不死で死など知らずたった愛する人一人を探すためだけに禁忌と言われた人間界への干渉をしてまうほど、どうしようもないほど惚れ込んでしまって、相手とめぐりあえる日を楽しみにできる幸せでもあり、相手を無心に探す虚無な付喪神の快進撃をとくとご覧あれ。
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