それから、季節をたった一周。されど一周分分老人は生きた。最期は宝だと何度も鼻を高くしていた店の陽だまりで居眠りをしているかのようだった。

 店は、とても俺一人じゃ回しきれなくて畳んだ。俺は老人のように優しくも、店を切り盛りする知識も持ち合わせてなどいなかった。

 

 

 でも、いつか。俺が1人で、店を切り盛りできて、この場所が小さくても老人が笑って、生きていた頃のようにふらりと誰かがやってきて世間話をできるくらいあったかい場所にできたのなら。

 ・・・・・・悪戯ばかりしても、笑っていれば許してくれる心を許せる相手に巡り会える場所になれたのなら。

 人の温かさを知らない俺の後輩たちに優しく出来る場所であれたのなら。

 

 

 

 ・・・・・・考えただけで口元が弧を描く。 



夢物語と笑いたければ笑えばいい。俺が初めて心からやりたいと思えたことだから。勝手にやって成功してやる。

 生憎様、俺には、老人がくれた夢のおかげで孤独も、独りも、何も怖くないんでね。

 

 

 さァ

 元ストリートチルドレンで、中学青春時代などなかったけれど、そこそこ幸せで、そこそこ不幸なガキの快進撃を始めてみようじゃないか。

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