ボクと彼女の回想記録

Sさんのまとめ

　かなりの人に話を聞いてみたのだけれど、あまり有益な話はなかった。こうも人間の記憶がばらばらだとは思わなかったわ。皆が皆違うじゃない。

　とはいえ、私も私で彼に対して抱いている人物像はまるっきり違う。それをここで紹介しても、読者である君は混乱してしまうでしょうから、省いておくわ。

　それにしても、まさか君が記憶喪失になっていたというのには、驚いたわ。生きていたと言うのは知っていたのだけれど、それは完全に予想外だったわ。おかげさまで、これをまとめる羽目になっちゃったけど。

　あ、でも、勘違いしないでね。これはもともと私独自で調べていたものを再編集したものに過ぎないから。新しく書き下ろしたのだって、精々この章くらい。本当はもっと多くの情報を載せた方が良いんでしょうけれど、受けてくれたのはあの三人以外にいなかったし。

　まあ、いいわ。

　私がこんなことをする理由だけれど、それは君がどうしてあんな行動に出たのか、その理由を知りたいの。その手助けになればいいかなって。

　最後に視線を交わした縁があるでしょ？　お願いね。