僕の証言 K君の場合

 あいつはただの馬鹿だよ。


 あんなに悩んでいるなら、僕に打ち明けてくれればよかったのに。どうして、死のうとするまで耐え続けたんだ。

 正直、僕のクラスはイジメが多かったと思う。でも、それは女子の方で多かった。それと反比例するかのように、男子は比較的仲がよかったんだ。誰が誰を嫌っているという話はまず、聞かなかったかな。


 あいつは、良いやつだったと思う。それこそ、彼が語ったような存在じゃあ、なかったさ。確かに、いろいろ失敗はしていたと思う。でも、それも決して悪いというものではなかったよ。というか、誰がやっても同じく失敗していたに違いないんだ。それを彼一人の責任に押しつけちゃったのは、正直、申し訳なかった。


 だから、あの時、あんなことを皮肉たっぷりに言われたって、別段不思議じゃなかった。精神的にくるものはあったけどね。

 とはいえ、こんな風に予想していたという感じで僕は語っているけど、でも、実際は彼の言葉は僕の想像を超えていたんだ。あそこまで、自分の急所を的確に抉られるとは思わなかったんだ。多分、クラスメイトの皆も同じ気持ちだったと思うよ。


 というか、あの後、中学校で何人か自殺しているわけだし。……おそらく、良心の呵責に耐えきれなくなったんだろうな。

 まあ、そういう僕だって未だにあの時の言葉は生々しく頭の中に蘇ってくるけどね。……こう言うと、なんだか呪いめいているね。


 ともあれ、あの事件は多分――というか絶対に僕達が悪いんだと思う。せめて、あの時彼を止めてやればまだよかったはずなんだ。隣のやつとか。

 その人が誰だったか分かるかって? ……確か、Sさんだったような気がする。


                    高校一年生 K君への取材より一部抜粋

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る