第3話
「こんにちは少女さん。」
やはり少女は俺より先に来ていた。小学生の象徴であるランドセルを放り投げて一人、体育座りをしていた。
「……こんにちはお兄さん。」
いつものように挨拶が返ってくる。しかし、少女の顔は悲しそうだった。
「ほらよ。」
とりあえず、俺は隣に座って約束のジュースを渡す。
「……。」
きっと何か嫌なことがあったのだろう。学校とはそういうものだ。
「今日学校行ったらさ、皆俺のこと変な目で見るんだよ。予想はしてたけどやっぱ嫌だよなー。」
「……。」
「でもさ、学校に行くことって、いや当たり前のことなんだけど、そんな偉いことなのかねって思うよ。泣き叫びながら行くくらいなら行かない方がマシ、」
「そうなのよ。」
……また少女は急に話し出した。
「今日も怒られたの。なんで行かないんだって。行こうとしているのにね。」
少女は冷静だった。怒っているのか、悲しんでいるのかも分からないくらいに。それでも声は震えていた。
「……でも今まで行かなかった私が悪いの。だって私、愛されてるもの。」
少女は言った。まるで自分に言い聞かせるかのように。少女は言い聞かせていたが経験の無い俺には分からなかった。
『愛』というものが。
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