第7話 きっと間に合う
二日目、相変わらず職場は殺伐としている。特定の条件下で生じるバグではあったが、致命的だった。改修にはどうあっても時間がかかるため、それまでシステムを止める必要がある。安定性のある前のバージョンに戻し、ひとまずの復旧はしているが、完全回復の見込みをいまだ立たない。
バグの原因はおおよそ見当はつている。しかし特定までには至っていない。開発チームは忙殺されていた。
「笹塚、これを今日の19:00までに頼む」
東雲が指示書を笹塚の机に置いていく。この忙しい中、指示書は簡潔にして明瞭。それでいて事細かに書かれている。
東雲の顔からもさすがに疲労が見えるが、纏う雰囲気はいつもと変わらず、笹塚に簡単な説明をするとさっそうと去っていった。
その後ろ姿がまたも赤火花と重なる。
彼女は今、終末の世界で何を思っているんだろう、笹塚の頭に一瞬そんな疑問がよぎった。
日をまたいで帰宅した笹塚は部屋に入るなり、パソコンに飛びついた。もう時間はない。一分一秒も惜しい。
作業途中であったテクスチャづくりに着手し、慣れない手つきながら、着実にモデルの肌を作っていく。
心身に疲労はあるが、作業が始まれば気にならない。いつもはつい手に取ってしまうスマホを遠くに置き、作業に没頭する。
モデルにテクスチャを張り付けては、ペイントソフトで色味や影を調整し、イメージを形にしていく。
――大丈夫だ、間に合う。
さらに数時間後、笹塚はテクスチャを塗り終え、気絶するように眠りについた。
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