第4話

呪詛の強さは感情の強さで決まると言うのなら。

私の怒りはこの人たちの恨みに負けているのか。


「そんなわけないじゃない!」


私は思いきり力を込めた蹴りを放つ。

ぐらりと呪詛の肉塊が揺れる。


「ねえ、その瞳は節穴?」


呪詛の顔、かどうかは解らないが、そのような場所を殴りつける。

肉が剥がれ、崩れ落ちていく。


「呪う相手間違えてんじゃねえっての!」


死の気配が込められた手を踏みつけ潰す。

肉塊から苦悶の吐息が洩れる。


「貴方の恨みがどれほど強いか知らないけどさ、恨む相手も間違えてる時点でそんな大した思いがあるもんか!」


びくり。

と肉塊が揺れる。


少しは声が届く。


「貴方たちの想いは”恨み”なんていう矮小な物?違うでしょう?」


それでも私を呪い殺そうとする呪詛を私は徹底的に殴りつけた。


「”恨み”だなんて一段低い負の感情に定義されるのはやめなさい!貴方たちの”怒り”は正当な物よ!私に向けるんじゃなけりゃね!」


子犬ほどに縮んだ呪詛の肉塊にはそれでも二対の瞳があり、じっと私を見つめている。


「私は怒ってる、それは当然でしょ。だって殺される理由がないからね。貴方たちも、そう。」


あ…ああ…。

呪詛から声が漏れる。


「貴方たちが苦しみを受ける理由も死ぬ理由すら本来ない。貴方たちのその感情は”恨み”じゃない、”怒り”よ」


私は机の上の調査資料を呪詛に叩きつけた。


「だからこそ、相手を間違えるべきじゃないわ。”怒り”を向ける相手を!」


資料には、殺害犯たちの現在の生活や住所が記されていた。


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