第2話
どうという事の無い話だった。
旅行中の夫婦が殺され犯人は見つからず迷宮入り。
地方紙に小さく掲載されていたのが30年ほど前の話だ。
謎も何もありはしない。
犯人は村の名士の息子と悪い仲間であり、それを村ぐるみで隠蔽したというだけの話。
そして祟りによって村は滅んでしまい、以降村には怨念が残った。
というありがちなオチがつく。
そういう事を専門にする探偵の調査で、事件の内容はすぐに知れた。
遺体の状況から妻を目の前で汚されるのを見せつけられた夫。
そして夫を目の前で弄り殺しにされた妻。
夫婦はその苦しみを瞳に宿して死んだのだ。
私は調査資料を机の上に放り出した。
背後ではガサガサと闇が蠢き、湿った視線を投げかけてくる。
苦しみを呪いに転化する術は古来より用いられた良くある物だ。
お百度参りに代表される、自らに課した苦痛を以て呪いと成す。
この夫婦の場合、受けた苦しみや死の恐怖は十分な物だろう。
瞳に情念を込め人を呪い殺す呪詛。
影に潜む二対の瞳。
人を覗き殺す魔眼。
面倒だが。
私はそれに相対さねばならなくなってしまったわけだ。
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