@popo9603

第1話

ガサガサと、揺れる。


木の枝はガサガサと揺れる。

まるでこちらを振り向いて欲しいかのように。


揺れる葉の間から、四つの瞳がずっと私を見つめている。


ああ、解っているとも。


軋みをあげて少しだけ開く扉の隙間からも。

不意に本が零れ落ちた本棚の隙間からも。


ずっと見ているんだろう。

私に振り向いて欲しいんだろう。


「ああ、私が悪かった。あんな廃屋の中を覗いてしまったんだから」


ガサガサと木の枝が揺れる音が応えた。


廃屋とはいえ雰囲気のある屋敷の奥に勝手に入り込んだのは悪かった。

怪しげな札も今思えば封呪の類だったのだと思い返される。


迂闊だった事は認めよう。

でも、私が廃村巡りなどを趣味としている代償としてはあんまりな結果だ。


その部屋を覗き込んだ時。


四つの瞳が、私を覗き込んでいた。


それからずっと。

私は覗かれている。

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