08 正義の戦士

「ブガァァァァァァァァァ!!!!!!」

 完全に拘束が解けたコンセプター・オーク。

 巡一に怒りを向け、拳を降り下ろした。

 しかし、

「ふんッ!」

 ゴッ!

「!?」

 自分のより遥かに小さな拳に弾かれる。

 コンセプター・オークはすかさず体勢を立て直し、巡一に拳の雨を降らせる。

 だが彼は、そのすべてに自らの拳を当て、攻撃を相殺した。

「ブギギギ……!」

 自分の攻撃がことごとく防がれることに、コンセプター・オークは苛立ちを隠せない。巡一との距離をとると、今度は周りに倒れていた木を次々に投擲し始めた。

「おっと!」

 巡一は、それらを避けながら敵に近づく。

 そして、ヤツの服を掴むと、

「おおおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぐんっと空中へ放り投げた。

「ブギッ!?」

 空高く上がっていくコンセプター・オークを見ながら、巡一はブレスのレバーに手を掛ける。

「締めといこうか!」

 レバーを上げた状態にし、しばらくすると、変身時とは異なる待機音が流れる。

『♫~♫~』

「とうっ!」

 巡一は高く跳び上がり、コンセプター・オークより上の位置で、高速回転を始めた。

「ブ、ブヒ!?」

 レバーを手前に戻すと、エネルギーが右足に溜まっていく。

 そして、その回転の勢いのまま、彼は踵を振り落とした。

『ファイナルエクシィィィード! コンバット!』

「ハァァァァ!!!!」

 ゴリッ、とコンセプター・オークの腹に踵がめり込む。

「ッゴォ!!??」

 上空から巨体が落とされ、その衝撃で地面にクレーターができる。

 衝撃波が伝わり、吹き飛ばされそうになるのを耐えるクレア達。

「ちょ、ちょっと! やり過ぎなんじゃないの!?」

 巡一が着地すると同時に、コンセプター・オークも立ち上がる。

 だがその姿はふらふらで、何故か火花も散っている。

「ブ、ブゴ、ゴ……」

 もう限界とでも言うように、コンセプター・オークが倒れる。

 次の瞬間、

 ちゅどぉぉぉぉぉん!!

 遠くまで届きそうな爆発。

「爆発したぁぁ!!??」

 驚愕するパレスとマキ。

「ふっ……!」

 爆発を背にポーズを決める巡一。

 そして、

「す、すごい。これが、エクシード……!」

 子供のように瞳を輝かせるクレア。

 その目に映るのは、紛れもないヒーローの姿だった。


       ***


「……で、これはどういうことなのよ?」

 コンセプター・オークを討伐した後、リマジハ村に帰還した巡一達。

 彼らの視線の先には、先ほど爆発したはずのオークが、元の姿で家族との再会を喜んでいる。

「あなた!」

「父さん!」

 喜びの涙を流して、抱き合う家族。とても美しい光景である。

「良かったな……」

「良かったな、じゃないわよ! なんで爆発したのにほぼ無傷なのよ!?」

「それはほら、体内の概念成分を浄化したから」

「説明になってないわよ!?」

 納得のいかないパレスに詰められて困っていると、クレアが間に入った。

「はいはい、そこまで。パレスちゃん、ちょっと落ち着こうね~」

「あ~ん、勇者様のなでなで気持ちいですぅ」

 態度が違いすぎる。別にこうなって欲しいわけではないが。

「さて、それじゃあ本題に入ろうか」

「本題?」

「君の事だよ」

 言われて、何とか思い出す。そう言えば、彼女達の旅に同行できるかどうかが保留になっていた。

「あぁ、すっかり忘れていたな」

「もちろん不合格ですよね!」

「いや、合格だけど?」

「そんなー!!」

 あまりにもあっさりとした合格発表。パレスには申し訳ないが、しばらく一緒にいさせてもらおう。

「しかし、本当にいいのか? 俺としては、とてもありがたいが……」

「もちろんだよ! この間のテストだけじゃない、さっきの戦闘でも実力は伝わったからね。それに」

 クレアがおもむろに、巡一の手を握った。

「僕の仲間を助けてくれた。理由としては十分だよ」

 彼女は巡一を見つめ、自らの感謝を伝える。

「ありがとう、ジュンイチ。今度は私達が、君の助けになりたい」

「達って、巻き込まないでくださいよ」

「しっ!」

 クレアのその真っ直ぐな言葉に、巡一は納得したように頷いた。

「……そうか。こちらこそ、ありがとう。助かるよ」

「こうなったら、散々こき使ってやるんだから!」

「ふふっ、よろしくお願いしますね」

「あの……」

 と、ここで勇者一行は、リマジハ村の村長に声をかけられる。

「お取り込み中、申し訳ない。助けてくれたお礼に宴を開催させてください」

「いやいや、宴だなんてそんな! 僕達はそんなつもりじゃ」

「いいんじゃないか?」

「い、いやでも……」

「別に、無理して開くわけじゃないんだろ?」

「ええ、もちろん!」

「それにこういう時、ええと、なんと言ったか…………、そう、『貰えるものは貰っとく』だ」

「何よそれ……、正義っぽくないわよあんた」

 パレスのツッコミに巡一は、確かに、と微笑した。

「……そっか。そうだね、ジュンイチの言う通りかも。それに、彼らの厚意を無下にはできないし」

「そうと決まれば、勇者様、早く行きましょ!」

「って、ちょっと引っ張らないで!?」

「ふふふ」

 宴の会場へと向かう勇者一行。

 彼らは、つかの間の平穏を満喫し、明日からの旅の再開に向けて英気を養うのだった。

 目指すは、魔王の討伐。そして、新たな仲間を元の世界に帰すこと。

 果たして彼らの旅は、いったいどんな旅になるのやら。

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異世界戦士エクシード 朝昼 晩 @asahiru24

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