最後の手段

通 行人(とおり ゆきひと)

最後の手段


「どうした、勇者よ……貴様らの力はその程度のものなのか?」

「ぐ……う……」


 圧倒的……魔王軍四天王の一人、サイ=ジャックの力はまさに圧倒的だった。


 仲間達と共に、幾多の死線を潜り抜け、雲霞の如き魔物の群れを蹴散らし、ここまできた。


 自分達は強くなった。そう……思っていた。いや、旅に出た頃と比べて自分達は格段に強くなった。


 しかしながら、それでもサイ=ジャックは自分達の強さを遥かに超えていた。


 武闘家の、巨大な岩をも砕く、鍛え上げられた拳は無残に砕かれ、

 魔法使いの、百体の魔物を一瞬で消し飛ばす究極の魔法はいとも簡単に打ち消され、

 剣士の、精霊王の力を宿した剣もへし折られた。


「……もういい、貴様らには飽きた」


 気怠げにサイ=ジャックが告げる。自分達に向けられた右手に暗黒の力が集まってゆく。


 満身創痍、絶体絶命、そんな言葉が安っぽく思える程の窮地だった……だが、俺は諦めなかった。最後の力を振り絞り立ち上がる。


「ほう……まだ立ち上がる力が残っていたか。だが……貴様に何が出来る」


 嘲笑うサイ=ジャックを無視して、俺は背後の仲間達に告げた。


「みんなすまない……《滅びの呪文》を使う!!」


 俺の言葉を聞いてサイ=ジャックが動揺する。


「滅びの呪文だと……!? 馬鹿な、それを使えば貴様らもただでは……いや、それどころか、この世界そのものが─」


 もう、俺は迷わない。どんな手を使ってでもサイ=ジャックを消滅させる。


「ま、待て!!」

「ウオオオオオオオオオッ!!」


 俺は、雄叫びを上げて駆け出し……そして、《滅びの呪文》を口にした。




「……《俺達の戦いはこれからだッッッ!!》」




 御愛読ありがとうございました!! ○○先生の次回作にご期待ください!!




 ……その日、一つの世界が終わりを告げた。

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