第4話 初投稿
ついに俺は世の中に打って出た……
興奮に稼頭央の手が震えた。
スマホのガラス面は何の反応も返してこなかったはずなのに、『公開』というボタンを押した時に何か物理的なボタンを押した感触を感じたような気がした。
確かに、ガラス面は彼女のおかげで蜘蛛の巣みたいにヒビだらけになってしまったが、そのヒビが指に触れた感触とは違う。
きっと、初めて自分の作品を世に送ったという高揚感が指先に錯覚を起こさせたのだろう。
俺が、まさか小説を投稿するなんて思わなかった。
あの時、彼女がぶつかってこなかったら、こんな発想はしなかった、いや、できなかっただろう。
彼女は突然現れた。
俺は昨日、取引先から嫌がらせとも言える無茶な発注を受けたせいで、今日は朝から憂鬱な気分だった。
そして、少しでも意識を仕事からそらそうと、どっかの誰かが小説投稿サイトに投稿している小説を読みながら歩いていた。
そして、曲がり角に差し掛かった時だった。
突然の衝撃と共に、思わず俺はスマホを落としてしまった。
「うわっ! えー?」
地面に転がったスマホを見て、嫌な予感がした。
俺は慌ててスマホを拾い上げようとして、
ふと、目の前にへたり込んでいる彼女に目を奪われた。
そう、その美少女に……
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