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「ほら見て、可愛いでしょう?」

 そう言って差し出した四角い画面の中には、ベビーベッドに横になる生まれたての赤ちゃんがいた。真っ白な布に包まれる赤ちゃんは本当に天使のようだった。

 男性は次々と写真をスライドさせて画面の中の沢山の天使を見せてくれた。

「もうすぐ生まれて一月になるんだけれど、毎日娘に写真を送ってもらっていてね。孫は目に入れても痛くないと言うけれど、それは本当だったね」

 なんて何とも言えない表情で言う。

 うん、きっとそうなんだろうね。その表情を見ていたら良く分かる。そしてきっと、将来娘さんに『甘やかせないで』って怒られるんだろうな、なんて。

「ははは、もうそれは嫁に言われているよ」

 言われてんのかーい。

「つい何か赤ん坊に良さそうなものがあったら買ってしまったりしてね。最近は嫁にも黙って買っておくんだ」

 なんて、全く懲りていないように言う。でもいいよね、おじいちゃんにとって孫は宝物だもの。

「まだ食べられないって分かっているのに美味しそうなベビーフードを見つけたら買ったりして」

 確かに生後一か月でそれは早すぎるね。

「はは、自分でも分かっているつもりなんだけどね。でもね、何でもいいから何かをしてあげたいって思ってしまうんだ。自分の子供が生まれた時も本当に嬉しかったけれど、孫は、また違うものだね」

「そういうものですか?」

 俺はまだどっちも経験がないから。

「違うよ。何て言ったらいいのかな、上手く言えないけれど、子供が生まれた時は嬉しい反面、責任も同時に感じたから。この子を幸せにしないとって。でも孫はね、嬉しい気持ちばかりなんだ。幸せにしないと、じゃなくて幸せにしてあげたいって感じかな? 祖父母は孫を甘やかすことが出来るからね。厳しいことは親にやってもらうよ」

「ふふふ、素敵なおじい様ですね」

「だって孫に嫌われたくないじゃない」

 そう言って男性は笑った。

 これから先、いくつになってもお孫さんと一緒になってアイスクリームを食べるのかなと想像する。それってなんて素敵な未来なんだろう。

 それじゃぁ鼻歌を歌ってしまうのも仕方ないよね。

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