幕合劇――おさらい

 原稿用紙に向かっていたタイリクオオカミが、息を吐きながら顔を上げる。ロッジアリヅカの一室、アミメキリンとタイリクオオカミが探偵事務所として使う部屋のことだった。


「ふぅ……」

「お疲れみたいですね」


 向かい側に座っていたアミメキリンが心配げに言うのに、タイリクオオカミは微笑を浮かべる。長らく紙面とにらめっこをしていたせいだろう。眉間を押さえてしきりに首をひねるたび、凝り固まった肩がメリメリと音を立てた。


「ちょっとね。この前の事件のことをまとめようかと思うんだけど、うまくいかなくてね」

「アルパカのカフェのことですよね。……色んなことがありましたよね。ホントに」


 渋い顔で宙を見上げるアミメキリン。あの日、陸の孤島となったアルパカカフェで起こった事件について、様々な出来事がよぎる。忘れたくても忘れられない難事件だった。

 思い出に対してため息を吐くアミメキリンに、タイリクオオカミは苦笑して椅子に座り直す。


「そうだね。本当に色んなことがあった事件だった。おかげでいざ思い出そうしてもいまいちうまく行かなくてね」


 言いながらタイリクオオカミが原稿の横に広げたスケッチブックを手に取り、パラパラとめくっていく。捜査中、絶えず気づいた出来事や思いつきを落書き混じりのメモが書き留めてきたものだ。何かが書かれたページが勢いよく通り過ぎていくが、当のタイリクオオカミはあまり興味を惹かれないようだった。


「……なんせ最後にこの事件に関わってからかなり時間が経ってしまったからね……」

「そうですねェ」


 アミメキリンはちらりと横を見た。


「なんせ最後に更新したの、2019年の6月8日ですからね。もともと更新自体ゆっくりですし、忘れちゃうのも無理ないですよ」

「ず、ずいぶんメタなこと言うんだね……ハハ。しかしそうか、三ヶ月か……」


 「まあたしかに」とタイリクオオカミは立ち上がると、アミメキリンの座る机にスケッチブックを広げた。


「だいぶ期間が空いてしまったのは事実だからね。どうだろう。本編を再開する前に、私と君とでここまでの流れについておさらいしてみないかい」

「おさらいですか」


 アミメキリンがスケッチブックに目を落とす。アルパカカフェで起こった出来事や掴んでいた情報について、細かく纏められている。


「そう。ここまで期間が開いてしまったらトリックや人間関係とか、ただでさえややこしいミステリー系の作品が変にさらにややこしくなってしまう。どうだろう、良い考えだと思うんだけど」

「そう、ですね。そうですね! 変に難しくなったりややこしくなったりするくらいなら、ここでしっかり振り返りましょう!」

「そうと決まれば早速書いていこう。事件については覚えているね」

「もちろんです! 記憶力には自信ありますから!」


 力強く胸を叩くアミメキリンに、タイリクオオカミが満足げに頷いた。スケッチブックの空いてるページに鉛筆を走らせていく。


「よし。それじゃあ、あの事件『こちらアミメ探偵事務所――見えない容疑者?!事件――』についてまとめていこう。まず最初に――


――


□あらすじ


 こうざんちほー。カフェの改装記念パーティ中、新しく設置予定だった木の像が何者かによって破壊されてしまった。依頼を受けて駆け付けたアミメキリンたちは、すっかり険悪なムードになったフレンズ達と出会った……。


~~~~


□登場人物


・アミメキリン

――アミメ探偵事務所の探偵。自称、名探偵


・タイリクオオカミ

――アミメ探偵事務所の探偵。自称、探偵助手


・アルパカ

――こうざんちほーのカフェのマスター。カフェの改装を記念し、手伝ってもらったフレンズたちを招いてパーティを開いた


・トキ

――パーティ参加者。麓に運び込まれた資材を山頂に運ぶのを手伝った


・ショウジョウトキ

――パーティ参加者。トキと同じく、麓に運び込まれた資材を山頂に運ぶのを手伝った


・ツチノコ

――パーティ参加者。古い設計図をもとに、増築された宿泊棟の設計と組み立てを行った


・スナネコ

――パーティ参加者……のはずだったが、先に麓に降りてしまった。現在行方不明


・ライオン

――パーティ参加者。麓に資材を運び込んだ


・ヘラジカ

――パーティ参加者。ライオンと同じく、麓に資材を運び込んだ


・アメリカビーバー

――パーティ参加者。ツチノコの設計を元に、資材の作製と組み立てを行った。壊された像の制作者


・オグロプレーリードッグ

――パーティ参加者。ビーバーと同じく、ツチノコの設計を元に、資材の作製と組み立てを行った。


・???

――像を壊した犯人


~~~~


□各話ごとの主な発見


・第一話:導入編

――この事件の発端。バラバラに壊れた像を踏み蹴散らし、犯人はカフェに向かったらしいが……


・第二話:導入編

――アミメキリンがカフェに到着するころには、すでにアルパカ以外の全員が険悪な状態になっていた。特に犯人だろうと目される四人を庇う親友たちが言い争いを繰り広げていたのだった。


・第三話

――アルパカ特性の新作紅茶を味わいながら、事件の経緯を探る探偵達。様々な理由からトキ、ライオン、スナネコ、ヘラジカ、ビーバーにアリバイがないことが分かった。


・第四話

――増築された宿泊棟へ移動する探偵達。直前に降りだした雨により宿泊棟の床には何者かの足跡が残されていたが、誰のものかは分からなかった。シャワー室には紅茶を溢されたというトキと付き添いのビーバーが置いていったらしきティーカップが残されていた。そのとき、ふと背後で廊下を走る足音が……


・第五話

――外へ向かう足音が聞こえたにも関わらず、宿泊棟には全員が揃っていた。カフェのある山頂と麓とを結ぶゴンドラが使用されていなかったことから、犯人は逃げていないと結論付けた。


・第六話

――謎の足跡。謎の足音。そこから宿泊棟の部屋のどこかに秘密の出入り口があると予想するが、いくら調べても隠し扉のようなものは見つからなかった。宿泊棟の出入り口に近い部屋にアルパカを呼んで見張りを依頼し、探偵たちは聞き取りを開始する。ビーバーたちに話を聞きに行くが、そこにいたのはトキたちだった。隠し扉の存在を疑うショウジョウトキが部屋を交換して調べていたのだ。

 聞き取りを行う最中、窓際の床に奇妙な雨漏りの跡を発見する。そして、ショウジョウトキが窓の外にツチノコの姿を見た。


・第七話

――急いで窓の外へ駆け付けたが、そこに誰の姿もなかった。捜索を開始しようかというとき、追いかけてきたアルパカからツチノコが部屋の中から出てきたことを教えられた。慌ててツチノコに会うが、彼女は外へ出た形跡がないのだった。自分の発言を信じてもらえず、意気消沈したショウジョウトキは部屋にとじ込もってしまう。


・第八話

――ツチノコの部屋にて、聞き取りを行う探偵達。同時に部屋の調査を行うが、宿泊棟増築の際に使用した道具が見つかるばかりで隠し扉の証拠はまったく見つからない。聞き取りを行ううち、ツチノコが何らかの手段で外へ出ている可能性が浮上してくる。が、肝心の隠し扉が見つからないため、推測の域を出ないのだった。


・第九話

――ヘラジカたちの部屋にて。ヘラジカから事件について聞き取りを行う。いわく、像が壊されたとき、もっとも近くにいたらしいが、犯人らしきフレンズは見ていないとのことだった。聞き取りを終えたとき、ヘラジカから自分を犯人として立てることで丸く納めることを提案されるが、探偵達は拒んだ。一応納得してみせたヘラジカだったが……


~~~~




 ――思惑――疑心――怒り。様々な感情の交差する混沌とした陸の孤島。


 ぶつかり合う感情の先にある真相とは……!?


 そしてまだ見えぬ犯人の正体とは……!?

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