第7話 六日の菖蒲、十日の菊
夏休みも終わり、文化祭の準備が少しずつ、しかし着実に行われるようになった今日この頃。正確を期するなら、9月10日。我々の部活でも、会議が開かれた。
「ねえ、何する何する⁈」
あおいさんは楽しそうに、ほぼノーモーションで机に乗り上げてこちらを見つめる。
「そうですね、例年通り展示会はどうでしょうか」
「ええ、それじゃあつまんないよ!」
勢いよく座り直し、不満げな表情を見せる。いちいち動きのうるさい、やかましい、賑やかな人だ。
「うん、つまんないかもですね」
その点、香音先輩は静かだった。
「あおいさんも、香音先輩も、去年はこれでやったんですよね?」
「そうだけど、毎年それってのもね」
「なるべく面白いことしたいですよね」
「そうなんですか…じゃあ、どうします?」
「そうだな…かるた大会はどうかな⁈」
「おお、かるた大会なら、面白そうですね」
「それいいですね! 今日のうちに申請すれば、六日の菖蒲、十日の菊にはならなさそうですね!」
「……六日の勝負、十日に聞く?」
「何ですかその勝負って」
かるた大会ですか?しかも、4日も聞かないとかどんだけ小心者なんですか。
「いや知らんけど……。雄ちゃんが言ったんじゃん!」
「あーちゃん、これは勝負じゃなくて菖蒲。つまりは、あやめのこと。六日の菖蒲、十日の菊って言うのは、時期遅れで役に立たないっていうことですよ」
今日の日にちと合致したため、少し使ってみたかったのだ。
「ほえ、なるほどね。でも、六日ってどういうこと?」
たくさん考えているのが表情に現れていて、とても可笑しく可愛く見えた。
「菖蒲は、端午の節句で5月5日に用いるもの。菊は、重陽の節句で9月9日に用いるもの。だから、それぞれ6日や10日では遅いということです、あーちゃん」
「ふーん。色んなことわざがあるもんだな。ゲホッゲホッ」
「風邪でも引きましたか?」
「え、ああ、気にしないで。最近急に寒くなったりするじゃん?ちょっと風邪ひいちゃってさ」
「そうですか、あまり無理しないでください」
「了解、雄ちゃん!」
ビシッとした敬礼を見せてくれたのは、確かに信頼できるものではあったけれども、あおいさん、それじゃ逆です。普通、右手です。
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