第18話

「勇太!!」

いきなり目の前で大声がして、勇太は驚いて寝ていた体を跳ね起こす。

「いつまで寝てんだい!学校はぁ!?」

自分の部屋で寝ていた勇太は、「え?」ととぼけた声を出して硬直して動かない。

電子時計に目を向けると、日付は廃校に行った日付と変わっていなかった。

「学校休みなの!?」

婆ちゃんの問いかけに首を横に振り、

「休みじゃないけど…」

と言った。

「ならはよ行きなぁ、遅刻でしょ!」

そう言って婆ちゃんは部屋を出ていった。

勇太は制服に着替えると、状況を呑み込めないまま足速に中学校へ向かった。


帰り道、友人達と一緒に長い坂道を下っていた。

上を見上げれば大きな雲がゆっくりと流れていた。

友人らが他愛もなく駄弁っている中、勇太は意を決して聞いてみた。

「なぁ」

「ん?」

友人達が一番端を歩く勇太を見る。

「廃校になった小学校って、まだある?」

その質問に友人達は首を傾げた。

「廃校になった小学校?」

「廃校なんてこの辺にあったか?」

友人達のその反応を見て、勇太は大慌てに言った。

「俺、やらなきゃ行けないことあるから走って帰る!

また明日な!」

そう言って勇太は坂道を駆け下りた。

「暑いのに、あいつ元気だな」

と、友人がそう呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る