第15話

「遅い…」

花子は山で、勇太を待っていた。

もう街の皆は、避難し終えただろうか。

そんな時、誰かが叫んだ。

「おい!あれを見ろ!!」

そう言われた時、何度も見たその光景が遠くにあった。

「洪水!?」

そう叫んだのは、小学校の校長先生だった。

信じられない、と目を見開いていた。

この顔を見るのも、これで最後。

花子はそう思った時だった。

「せんせー!ユイちゃんがいない!」

先生たちが急いで確認するが、やはりいないらしく大声でユイちゃんを探し始める。

「すいません、多分その子は小学校に戻りましたよ」

そう言ったのは息を切らした中学校の女子生徒だった。

「私と同い年くらいの男の子と一緒に、私の自転車で。

何か取りに行かなきゃいけないものがあるって」

「勇太…っ!」

花子は持っていた傘を投げて、急いで山を駆け下りた。

あの時、校長が洪水と叫んだ時、小学校はもう手遅れだったに違いない。

そうなると、勇太とその子は既に…

嫌な事しか考えられない、悪い方向にしか向かない。

いつだって、そうだったから。

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