第14話

すると、前方から自転車に乗った誰かがこっちに向かってきていた。

すれ違いざま、目が合った途端に勇太は足を止めた。

自転車のブレーキ音が響き、その人も勇太に振り返る。

「…婆ちゃん…」

「え?」

勇太は思わず、そう呟いてしまった。

その女子中学生は意味がわからないという顔をする。

「あっ、すいません!その自転車貸してもらえませんか!?」

そう言って少女を下ろし、その人の目の前まで来る。

「なっなんで」

「その子の大事なものを取りに行かなきゃいけないんです!」

その人は女の子を見ると、首を横に振って、

「だめだよ!小学校には爆弾が仕掛けてあるって言ってたし、こんな雨じゃ」

「大丈夫なんです!いいから早くしないとっ」

「大丈夫…?」

勇太は悩んだ。もう時間が無い。もう…。

そして勇太は勢いよく頭を下げた。

「お願いします!その自転車を貸してください!」

会話が静まった中、雨の音だけがそこに響いている。

そんな中、その人は言った。

「わかった、早く戻って来てね」

その人は自転車から降り、勇太に渡した。

「ありがとう!」

勇太は少女をサドルに座らせ、立ち漕ぎで小学校を目指した。

その女子中学生は、勇太たちが去った後、走って山を登った。

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