第13話
傘を差した人が、山へ集まってきた。
小学生は先生が持ってきてくれた傘を使って雨をしのいでいる。
皆、不安そうな顔だ。
花子もまた、不安そうな表情でガードレールの傍から街を見つめている。
すると、麓のほうからここへ向かって走る勇太の姿が見えた。
花子はそれを見つけて、勇太の元へ行こうとするが、
「そっちにいちゃ危ないよ?」
と、近くの先生に小学生たちがいる元に連れ戻された。
小学生や先生の目もあって、思うように動けない。
仕方なく、花子は勇太をここで待つ事にした。
勇太は走っていた。
もう被害のない安全圏だが、走った。
すると、少女が山道を下ってこちらに走ってきた。
「だめだよ行っちゃ!」
勇太は慌ててその子を止めた。
少女は暴れて、「離して!」と叫ぶ。
「ストップストップ!どうして戻るの?」
少女は泣きそうな顔をして、
「だって、わたしのだいじな写真がっ」
「写真?」
少女は目を抑えて、頷いた。
「ママとパパの写真
ママ、もういないから、パパが大切にするんだぞって言ってわたしにくれた宝物なのっ」
勇太は困惑してどうしようかと迷った。
雨が強い、傘をさしてない少女と勇太はびしょびしょだ。
「…わかった、俺もついてくから」
勇太はそう言うと少女に笑いかけた。
勇太も幼い頃、両親を亡くした。
親との思い出なんて覚えてないが、写真があるおかげで色々わかる事もある。
勇太は女の子をおんぶしてあげると、走り出した。
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