第12話
数分前、勇太は花子と別れたあと、神社にいた。
「ふぅ」と一息ついた勇太は、賽銭箱の前で頭を下げると、
「神様、皆を救うためなんです。借りますっ」
そう言って、賽銭箱を踏んで壊した。
そこにあった10円玉を取ると、離れた場所にある公衆電話で、電話をかけた。
市役所は、勇太の住む時間でも何年も続いていて、結構古びていた。
それを見る限り市役所は被害がなく、災害からそのまま残っていると考えた勇太は、迷いなく市役所に電話を入れた。
電話番号が変わっているか否かは賭けだったが、繋がった事に少し安心した。
「〇〇市役所です」
「…」
なんと言おうか、言葉が詰まった。
「もしもし?」
「爆弾を、仕掛けました」
受話器の向こうから「え?」と驚く声が聞こえた。
「場所は小学校の校門前と、川の付近にたくさん…
時間はないです」
「そんなっ」
「デマじゃない…本当ですから」
そう言って電話は切れた。十円玉じゃあまり長く話せないが、勇太はそれで十分だった。
あとは市役所側が避難警告を発表したのを確認してから、花子の元に戻る。
数分もしないうちに、街に警告音が鳴り響いた。
とても、怖い音だった。
「市役所からのお知らせです。只今、爆弾を仕掛けたという情報がありました。場所は川付近と小学校、近くにいる方は直ちに、反対側の山へ避難してください」
それを聞いた人達は、急いで逃げ始めた。
勇太はそれを見てから、花子の元へ走り出した。
そして雨は、急激に強くなった。
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