第6話

その言葉は、今の勇太には到底理解ができなかった。何を言っているんだ?と、唖然して言葉も出ない。

「ほら早く!あと2時間後には雨降ってきちゃうから!」

と、足をじたばたと地面に踏みつける花子。

「よくわかんないんだけど…っていうか、ここ何処?」

辺りを再び見て、勇太は言った。

「ここはあなたの生きてる時間の場所でいうと、あなたが通っている中学校の校庭かなぁ?」

花子は首を傾げながら言った。

徐々に花子が言っていることを理解してきた勇太は、花子に確認すべく、聞いた。

「つまり、俺はタイムスリップした?」

「私がさせた!」

と、自慢げに言い張る花子に、勇太は言葉を失った。

「はぁ…」とため息をつくと、勇太は立ち上がった。

半信半疑、嫌ほとんど疑だが、その学校さえ見れたら信じよう。そう思って花子に聞く。

「えー…じゃああの廃校はどこ?」

「私が連れて行ってあげる!こっち」

そう言って花子は駆け足に林の中を進む。

その速さに驚いて、勇太は全力で花子を追いかけた。あまりの速さに周りの景色を見る余裕もない。

元々、勇太は体力がない方で、外出よりも室内にいる方が多かった。学校の体力測定だって、下から数えた方が早いだろう。

かと言って、勇太は中学生だ。小学生の高学年ならまだしも、低学年ほどの女の子に駆け足で負けてしまうほど自分の足が遅いとは、勇太自身も思ってもみなかった。

だけど、少女は「花子って呼ばれている」とか「自分がタイムスリップさせた」など、普通の人間なのか疑う発言ばかりしている。

本当に人間か?よくよく考えてみれば、おかしい点だらけだ。

廃校になった女子トイレにいたはずなのに、何故か気を失って目覚めた場所は見知らぬ林の中。

気を失う前、女子トイレで勇太は花子さんを呼んだ。そして、出会った少女は花子と皆から呼ばれているという意味不明な事を言っている。

俺が追いかけているのは、本当にトイレの花子さんなのか?と、勇太の顔に汗が流れ落ちた。

「ここだよー!」

その声にハッと目を覚まし、少し遠くから聞こえた声の方を見ると、そこには確かにあの廃校があった。

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