第4話

入った途端にその部屋中には異臭が漂っていた。

トイレの洗剤の匂い、寂れた鉄の匂い。空気は湿気っていた。

勇太はその中を進み、迷うことなくトイレの個室の扉をノックした。

「花子さん…えっと、遊びましょ」

自分の声がトイレ中に響くのを聞いて、俺は何をやってるんだ…と落胆する。

もう終わったと思って皆の元に帰ろうと扉に足を進めた時だった。

「ギィィィィィ…」

後ろで扉が開く音が聞こえて、勇太の足は止まった。

恐怖からか、体が前に進もうとしない。

勇太は数秒の内でいろんなことを考えた。

花子さんが後ろにいるのかもしれない、殺されてしまうのかもしれない、もしかしたら俺が歩いたせいで開いたのかも、幻聴だったりして…。

勇太はゆっくりと後ろを振り向いた。

花子さんはいなかったが、扉は開いていた。

勇太は、やっぱり俺のせいだったんだ。と考え込み、その扉を閉める。

はずだった。

伸ばした手は扉をかすり、勇太は気を失って床に倒れ込んでしまった。

どこからか、幼い子供たちがはしゃぐ声が、最後に遠くで聞こえてきた。

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