第3話

「お!勇太来た!ビリだぞー!!」

その場所には既に先程の友達が皆揃っていた。

勇太はその場所に駆け足に向かい、「ごめん」と謝る。

「勇太来たし、早速入るか!」

目の前には、あの廃校がある。校舎は暗く、どんよりとした空気を感じた。

あぁ来てしまった…。勇太はその不気味な校舎を見上げ一人で落ち込む。

友人たちの後ろを付いて歩き、ついにガラスが割れた昇降口に足を踏み入れた。

「寒くねぇ?」

友人が肩を摩って言う。確かに外よりもひんやりとしている気がした。

ここの話を聞いていた勇太は他の誰よりも寒気がして、既に体調がおかしくなってきていた。

そんな状況でも、勇太らはどんどん奥へ進んで行く。

「着いた!ここだよここ!」

友人の一人が嬉しそうに声を上げた。

そこには赤い人のマークが描かれた女子トイレがあった。

「ここがトイレの花子さんが出るって噂が有名なトイレだろ?」

そんな話を祖母から聞いていなかった勇太は、そんな噂があったのかと驚く。

「確か前から三番目のトイレのドアを3回ノックして花子さん遊びましょーって言うんだよな?」

「そうそう、けど大人数じゃ恥ずかしくて出てこれないらしいから一人だけでトイレに入ってやった方がいいって聞いたぜ」

友人たちがそう話す中、勇太はトイレよりも周囲の不気味な雰囲気に気を取られて、「早く帰りたい」とばかり考えていた。

「じゃあジャンケンで決めようぜ?」

「勝ったやつな」

友人達は面白そうにそう話すと、手を出した。勇太はさっさと終わらせようと、何も言わずに合わせて手を出す。

「ジャンケンぽい!」

その結果に、勇太は絶句した。

「勇太だけ負けるとかジャンケン弱すぎかよ!」

と、その場にいた友達達は爆笑した。笑い声が校舎に谺して、脳内まで響き渡ってくる。

しかし、どうしても早く帰りたかった勇太はギュッと拳を握り締めて言った。

「仕方ないな…」

「頑張れよ勇太!」

「何かあったら俺たちこの扉の外で聞き耳立ててるからすぐ助けるぜ!」

勝者の余裕かなんだか、その余裕な笑みに無性に腹が立つが、勇太は女子トイレの扉を開けて中へ足を踏み入れた。

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