第2話

家に着くと、勇太は制服から私服に着替えた。

いつもリビングルームにいる叔母に、遊びに行くと伝えようと勇太はそこへ向かう。

「ばぁちゃーん」

と、部屋の前の廊下で祖母を呼んだ。

「なんだい?」

勇太は開いたドア枠に手をかけて部屋を覗き込み、叔母を覗き見る。

「遊びに行ってくる」

「そぅかい、気をつけて行くんだよ」

「うん」

勇太は部屋を後にしようと、その場を離れようとしたが進めた足を戻した。

「ばぁちゃん」

「なんだぃ?」

「ばぁちゃんってそこの近くの廃校のこと知ってる?」

祖母は「あぁ知ってるよ」と言ったので、勇太は部屋に足を踏み入れ、空いた椅子に座った。

「教えてくんない?」

「いいけど、あんたそこに遊びに行くのかい?」

「まぁ…」

そう言うと祖母は「ふぅん」と言って、話し始めた。

「あの学校はね、私があんたと同じ歳の時に洪水で廃校になってしまったんよ」

「洪水?」

「そう、結構な方が亡くなってね…大半が幼い子供だったんよ」

勇太は目を見開いていた。

「それから子供が少なくなってね、残った生徒はもうひとつの小学校に移って、それからあそこは廃校になってしまったのさ」

「…」

勇太は初めて知ったその情報に絶句し、驚きを隠せなかった。そしてそんな事を聞いて、どんどん行く気が失せていく。

そんな中で、蝉の声は煩く部屋中に響いていた。

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