トイレの花子さま

@inuinu211

第1話

大きな雲がゆっくりと流れていたその真夏、長い坂道を男子中学生たちが駄弁りながら下っている。

その端っこを歩く勇太は、暑さに若干バテながらワイシャツの襟をパタパタと動かしている。

「あぢぃ」

勇太は、額に流れる汗を袖で拭いて虚ろな目で呟いた。

そよ風に揺れる木々の揺らめきが、静かな音を立てて葉を零す。

「おいゆーたぁ、俺の話聞いてたー?」

と、横を歩く友達が聞いた。

「え?ごめん、聞いてなかったわ」

「だからぁ、今日肝試しするからさ?四時にあの廃校前に集合って話」

勇太は「はぁ?」と嫌な顔をして言った。しかし、友人はそんな勇太に強請み込み、勇太は仕方なく承諾する。

「じゃそういうことであとでみんな集合な!」

友人達は「またなー!」と言ってそれぞれの家に早足に帰って行く。

暑いのにあいつらは元気だなー、と勇太は関心しながらゆっくりと坂道を下りた。

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