44話 勇者side ダンジョン再び

場所は移ってここはピルーク王国。

初めての勇者召喚に成功した国である。その大広間に勇者達は集まっていた。集めたのは王女ではなく、ピルーク王国騎士団団長のメイギスだ。

「よし、みんないるな。今回集まってもらったのは前に1度いったダンジョンにもう1回行ってもらうためだ。」

「ダンジョン…ですか?」

「ああ。もう1回行ってもらう。前はあんなことがあって訓練にはならなかったからな。」

「でも宝玉はどうするんですか?」

「宝玉の残りひとつはギリースにあるダンジョンでの訓練が終わってからでも十分間に合う。」

「でも!…そ、そうだ!藤山は!藤山を探す件についてはどうするのですか!」

「優のことは俺たち騎士団も探してる。心配するな。」

「ですが今はそれよりも優先すべきことがあると思います!」

「…ほう…言ってみろ。」

「神崎達を殺した犯人をこの手で捕まえることです!」

「そうか…アーメルで会って戦ってるんだろ?どうだった?勝てそうだったか?魔神の妹は?お前達でなんとかできそうな相手か?」

「それは…」

「いいか?お前らはまだまだ未熟だ。小宮が言っていたが勝てそうにないと言っていた。そんな相手に今のお前らで何とかできるのか?勝てるのか?」

「…やって見なくては分かりません。」

「そうやって無鉄砲に挑むのか?」

「勝てるかもしれないでしょう!」

「馬鹿か?お前は少しリーダーとしての自覚を持て。今のお前達じゃ…神崎達の二の舞だぞ?」

「!…それは…」

「なんかわかんねえけど今のはないぜメイギスさん。」

「賢治…」

「そんなに俺達が信用ならないってんなら勝負しようぜ?」

「…いいだろう。調子に乗ってるガキにお仕置きしてやる。」



ピルーク王国訓練所

「誰から来る?」

「俺から行くぜ。」

名乗りを上げたのは橘だった。

「賢治からか。俺は別に全員まとめてでもいいんだぞ?」

「なんだとぉ!舐めんじゃねえ!」

「ふん!攻撃が真っ直ぐすぎる。」

メイギスはそれを避け、木刀の柄で、橘の後頭部を殴り気絶させた。

「け、賢治!」

「次はどうする?」

「くっ…」

「なんなら束でかかってきてもいいんだぞ?」

「…みんな、行くぞ。」

天城の声と同時に全員が一斉にメイギスに切りかかる。

「…全員で同時に切りかかってどうする?連携もクソもないだろ?」

見るとクラスメイトは所々でぶつかってしまい、口論になっている者もいる。

「な!おいみんな!連携を取るんだ!」

「それをあらかじめ指示しておくのがリーダーの仕事だろ?」

「…くっ!うおぉ!」

「握りが甘すぎる。そんなんで良く魔神軍を撃退できたな。まぐれか?」

「ふ、ふざけるなぁ!」

バシッ!

「…ッ!」

メイギスは天城の手を木刀でうち、落とした。

他のものも同様に木刀でを落としていく。

「はぁ…はぁ…くそ!」

「これでわかっただろう?お前らぐらい俺でも何とかできる。俺達騎士団よりもさらに強いロキア帝国の騎士団がその2人に殺されているんだ。今のお前らじゃどうにもならない。」

「で、でも!聖剣術があれば…」

「ならもう1つ教えてやろう。これは本当はお前達には話しては行けないことなんだが…7大魔王の一角が落とされた。」

「!…そんな…」

「犯人はお前達が戦いたい、倒したいとほざいてる奴だ。」

「…そんな…魔王が?」

「少しは自覚しろ。お前達はまだまだ弱い。だが訓練次第では俺や、7大魔王よりも強くなることができるんだ。」

「…」

「他のものもだ。お前達は光佑に頼りきっている。光佑がいれば大丈夫だ、とか思ってるんじゃないだろうな?別に俺はお前らなんかの手を借りなくても守ることは出来る。お前らにその気がないのなら教える気は無い。時間の無駄だ!」

「…頭が冷えました。」

「…どうしたい?」

「俺たちを…強くしてください!」

「…わかった。ならば五分後にダンジョンに出発する。遅れるんじゃないぞ?」

「はい!」



「…菜々?」

松山は俯いていた江ノ島に声をかけた。

「え?あ、ううんなんでもないの…ただ…」

「…まあ7大魔王が勝てないんなら今の私たちがどうこうできる相手じゃないわよね…」

「あの二人が…あんなにも強いなんて…私たちはここを守りきることが出来るのかな?」

「…まあ守るためには藤山くんも見つけ出さないとだけどね。」

「…うん。」

「…あの、菜々?」

「ん?」

「…藤山くんのことなんだけど。」

「うん。」

「…彼は生きていても私たちに手を貸してくれるかはわからないわよ?」

「…うん。分かってる。だからその時は私に任せてくれないかなぁ?多分クラスの中で優くんのことを一番理解してるのは…私だと思うからさ。」

「…そうね。」

「どうかな?本当にそうなのか?」

「…小宮くん。」

二人の話に入ってきたのは小宮だった。

「何が…言いたいの?」

「いや別に。ただ理解していると言っている割には彼が裏切ったって知った時は積極的に彼を攻めていたじゃないか。」

「…それは…」

「それともそれが君の言う理解しているということなのか?」

「ち、違…」

「まあどの道、藤山は生きちゃいないだろうけどね。」

「そ、そんなことない!優くんは…きっと…きっと…」

「そういう根拠がないこと僕は嫌いなんだ、やめてくれるか?反吐が出る。」

「どうして?優くんを信じなきゃどうしようもないじゃないの…?」

「藤山を信じる?それをよく君がいえたねぇ?」

「…つ!…あなたに…何が分かるの…?」

「分かるさ。君が藤山のことなんか信じてないってことがね。」

「何を…」

「君はあの時藤山が何かをしたって言う前提で話をしていただろ?だから藤山を見つけた時はなんであんなことをしたのか説明してもらう。とか言ってたんじゃないか。僕は藤山があんなことしたとは思っちゃいない。それならまだ僕の方が藤山のことを理解してやれると思うけどね。」

「…そこまでよ。小宮くん。」

「松山。」

「あの時は誰でも混乱するわよ。誰しもがあなたみたいに冷静じゃないの。わかった?」

「ふん…まあいいさ。精々藤山探し、頑張ってくれよ。」

そう言って小宮は去っていった。

「…大丈夫?菜々。」

「…うん。」

「…悔しいけど小宮くんの言う通りね。私も含め。」

「…」

「…まあみんなそうだったんだからあなたが責任を感じることないわ。今はダンジョン攻略に専念しましょ。」

「…うん。」

それぞれが思いを抱えたままダンジョン攻略が幕を開けた。

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