43話 目指すは

次の日の朝これからの旅に必要なものを揃えるためにユウとミーシェはアーメル王国に戻ってきていた。結構文化は発展しているらしく、もう何軒か店が復活していた。

「そう言えばさ、勇者達はどうしたのかな?」

「さあ?帰ったんじゃねえの。」

「そうだね。いつまでもここにはいないよね。」

「ああ、とにかく道具屋に行くぞ。」

「うん。」

住民に聞いたところ、道具屋は街の南にあるため、そんなに巨人による被害を受けなかったらしい。

「あ、そうだミーシェ。」

「ん?」

「お前は名前が割れてるんだからなんか偽名考えろよ。」

「…確かにそうだね。…うーん…」

「なんでもいいぞ。」

「じゃあユウで良くない?」

「なんでだよ…」

「じゃあサラにする。」

「姉さんと同じじゃねえか!」

「文句ばっか言わないでよ〜。思いつかないんだもん。」

「だからってこれはないだろ…」

「うう…」

「…」

「うーん…」

「…」

「うーーーーーん…」

「…わかった。俺が考えとく。」

「わぁ!…ありがとう!」

絶対これ狙ってたよね?この娘。

「ユウもなんか偽名考えようよ。」

「は?俺は別に大丈夫だろ。」

「でも念には念を入れてさ。」

「…やだよ。」

「えー?いいじゃーん…一緒に考えよ?」

「断る。」

「じゃあもういいもん。今度からユウのこと中二病ネームで呼ぶから!」

「お、おい待て。なんでお前が中二病を知ってる?」

「前にユウから聞いたもん。」

「ちっ!」

「え?舌打ち?」

教えるんじゃなかった…

「…正直自分の偽名を考えるのが恥ずかしい。」

「んー?それなのに私には考えさせようとしたんだ?」

「そ、それは…」

「ねえねえ?中二病ネームと自分で考えた名前なら…どっちがいい?」

「…じ、自分で考えます…」

「よろしい。私のもよろしくね〜。」

こいつ…

そうこうしているうちに道具屋についた。


「らっしゃい!」

「こんにちは。」

「ねえ何買う?」

「そうだなぁ寒くなってきたから厚めの毛布と…あとは…薬草だろ。うーん…なんか欲しいのあるか?」

「あ、じゃあこの抱き枕欲しい!」

「…なんで売ってんだよ。」

「これならユウに迷惑かけなくて済むし。」

「…」

「どうしたの?」

「…で良くね?」

「ん?」

「い、いや別に迷惑じゃないって…言ったろ?」

「え?」

「いやさ、夏とかは暑いだろうけどさ、もう寒くなってきたからさ。暖を取るのは大事ただろ?」

「うん。」

「だから…その…俺で良くね?」

「う、うん。そう…する。」

そう言ってミーシェは抱き枕を戻した。

「さあ!他にも探そうぜ。」

「う、うん。」

結局この店では、大きい厚めの毛布と薬草、ポーション、最新のモンスター図鑑ミーシェの希望で、新しいランチテーブルを買った。

買ったものは全て俺の空間魔法でしまっておいた。


「他にも服とか買い揃えておこうか。」

「うん。」

「広場の方でバザーやってるらしいからそこ行こうぜ。安く手に入るし。」

「そうだね。」

広場につくと周りがあまり復興していないということもあり、なかなかの賑わいだった。

「すごいねー。結構いっぱい店出てるんだね。」

「そうだな。骨董品とかも売ってる。」

いらなくね?

俺たちはそこで適当な服の店に行った。


一時間後…

「おいミーシェ…早くしてくんね?」

「ちょっと待って。うるさい。」

うるさいって聞こえたのは聞き間違いだと思いたい。

「ジャーン!どうよ?」

「ブフォ!」

「どうしたの?」

「え?だってそれは…」

ミーシェが下にはいていたのはミニスカートだった。ていうかなんで?この世界にミニスカがあるとは…

「どうかな?」

うんうん。最高だ。その恥じらいの表情がまたたまらない。

「買おう。」

「え?いいの?」

「いいのいいの。他にも選びなさい。」

「なんかユウ…テンションが。」

「いいからいいから。俺が選んでやろうか?」

「いいの?!」

「おう。…そうだなぁ…こいつはどうだ?」

俺がミーシェに渡したのは、黒のブラウスだ。

「ミーシェは肌が白いから黒が似合うかなぁって思ってな。」

「着てくる。」

そう言ってミーシェは簡易的な試着室に入っていった。

しばらくたってでてきた。

「どお?」

「…ああ、綺麗だよ。」

それは本当に見とれてしまうくらい綺麗だった。

「…ありがと。これにする…」

「おう。」

「他にはねー…これにしよ。」

そう言ってミーシェはひとつの服を手に取り中へ入っていった。

そしてまた出てくる。

「…あれぇ?ちょっと胸がキツイかな…」

「ブーーー!」

「ちょっと?!ユウ!」

その服は谷間を必要以上に見せたドレスのような服だった。

「お前って結構…」

「ん?なになに?」

「いんや、なんもない。」

「え?なに?」

「いや、忘れてくれ。」

「う、うん。」

ミーシェって結構胸でかいんだなぁ…うんうん、いい事じゃないか。

でも確かサラの方は残念だった気がする。

「買おう。」

「え?でも高いよ?」

「大丈夫。しかし俺の前以外で着ないこと!」

「なんで?」

「俺専用ってことで。」

「?…わかった。」

「分かればよろしい。…そう言えば広場の掲示板に最近の情報が乗ってるらしいな。見に行こう。」

「うん。」

人混みをくぐり抜け掲示板を見ると、巨人の襲撃のことが詳しく書かれていた。

「えっと…なになに〜…勇者によって巨人討伐。血の教団を打ち破ったのは勇者のリーダー天城光佑…なにこれ?」

「デタラメ書かれてるね…」

「あいつら自分たちの手柄にしたのかw」

「いいの?」

「別にいいさ。逆に俺たちのことが書いてあると困る。」

「そうだね。あ、でも私たちのこと書いてあるよ。」

「んー?どれどれ…巨人討伐の裏で蠢く影城を襲った二人の魔族。だって。」

「しっかり悪役としてね乗ってるね…」

「さらに詳しく書いてあるな…二人のうち一人は魔神の妹のミーシェであり、もう1人は魔族のユウと言う男である…名前がバレてる!」

「ああ、私勇者の前でバンバンユウのこと呼んでたからね〜。」

「お前のせいかよ!」

「え?でもユウ松山って子に自分は魔族のユウだ。って言ってたじゃん。」

「え?…あ。」

「でしょ?」

「さて…偽名考えますか。」

「考えて考えて!」

「ミーシェだから…ミー…ムー…ムーシェ?」

「却下。なにそれ?」

「え?」

「ちゃんと考えて。」

偉そうに言ってるけどこいつ偽名に俺の名前を使おうとしてたよな?

「そうだなぁ…ミー…ムー…メー…モー…」

「もうっ!そんなんだったらいつまでもたっても出てこないよ!」

だからなんでこいつはこんなに偉そうなんだ?

「ちゃんと考えて!」

「ミーシャ…とかで良くね?」

「さっきよりはマシね。」

こいつ腹立つ!

「ユウはどうするの?」

「俺はユウにキを付けてユウキにする。」

「私がミーシャで、ユウがユウキね!わかった。」

「け、決定でいいのか?」

「うん。よろしくねユウキ?」

「おう。ミーシェ…じゃなくてミーシャ。」

「間違えないでよ?」

「ああ、気を付ける。」

「決まりね!」

「ああ。このあとの事だが、どうやら俺達がエルフの里に行ってる間に2個の宝玉はピルークに集められたらしい。」

「じゃあ今から行くのは…」

「まだ宝玉があるギリースだ。」

「うん。」

「まあ近いから気楽にな。それに…」

「それに?」

「お前には指一本触れさせはしない。」

「うん。よろしくね。」

「ああ。」

宿屋がまだ復興していないためまた野宿にすることにした。


その夜。

「おやすみ、ミーシェ。」

「…うん。」

「どうした?」

「…別に。」

「?」

「…二人で寝るのに何もしないんだね…」

「え?」

「おやすみ。ヘタレさん?」

「え?え?」

そう言ってミーシェは俺に抱きついて目を閉じた。

「…して…欲しいのか?」

「…」

「お前の言う通り俺はヘタレだからなぁ…」

「?」

「これで許してくれ。」

俺はミーシェに軽くキスをした。

「んっ!」

「…」

「なにを…」

「これでいいか?」

「え?えと…お、おやすみ!」

なんだ。こいつも強がってた割にはドギマギしてんじゃねえか。

「んふふ…」

「ふ…おやすみミーシェ。」

「…うん。」

次なる目的地はギリース。それに向けて二人は仲良く眠りにつくのだった。

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