29話 魔神軍訪問

ミーシェの過去のことを聞いた次の日、二人は楽しく朝ごはんを頬張っていた。

「ユウ、はいあーん。」

「な!はぁ?自分で食うわ!」

「ぶー…照れちゃって。つれないなぁ。」

「うっせ!とっとと食え。」

「むー…はぁい。」

なんか昨日からミーシェとの間に少しあった距離感がなくなった気がする。そして逆に近くなった気がする。

「…おい、ミーシェ。」

「んん?」

「少し離れてくれるか?食いづらい。」

「だから私が食べさせてあげようか?」

orz…まじでどうしたんだ?

過去のことを知りあった位でこんなに近くなるのか?

「割とマジで近い…」

「んふふ…」

「…はぁ。早く食べろよ?」

「ん。」

「はぁ…」



朝食を食べたユウとミーシェは、少し休んでから、アーメルに向けてまた、歩き始めた。

「アーメルはどんな国なんだ?」

「アーメル?うーんとねー私がまだ復讐神になる前は貿易の盛んな国だったよ。港があって。そうそう、そこにある灯台から見る夕日が絶景なの!」

「へぇー…着いたら行ってみるか。」

「うん!行こ。デートだね。」

「ん?ま、まあそうなるか…」

「えへへ…楽しみだなぁ…」

まあ、デートと言われて悪い気はしまへんなぁ。それにミーシェが楽しそうでなによりだ。

「この森は魔物が少ないんだな。」

「そうだね。いても弱い魔物ばっかり。」

「まあその分楽に進めるが…」

「話もできるもんね!」

そう言ってミーシェは俺の腕にしがみついてくる。

「…暑い。」

「大丈夫?」

「離れてくれ。歩きづらい。」

「むー…」

「…エルフの里にはどうだ?行ってみるか?」

「…うん。行くだけ行ってみる。」

「そうか…無理だけはするなよ?」

「うん。分かってる。それに…」

「それに?」

「何かあったらユウが守ってくれるでしょ?」

「あ、ああ任せとけ。」

すると茂みから一人の男が出てきた。

「?…お前…どっかで」

「忘れたとは言わせないぜ?」

「…」

「…」

「…悪い。忘れた。」

「ずごー!て、てめぇ。」

うわぁ、マジかこいつ。自分でずごーとか言ってるよ…

「俺だよ俺!」

「オレオレ詐欺か?」

「なんだそれ!?なら教えてやるぜ…俺は盗賊のグロック。てめぇにやられた盗賊団の生き残りだ!」

「…ああ、スフランの近くでスコットさんを襲ってた…」

「へ!やっと思い出したか…」

「それで?何の用だ?」

「決まってんだろ!お前を殺しに来た!死ねぇ!」

グロックは斧を振りかざして近づいて来る。

「…よっと。」

「くそ!どらぁ!」

「ほいっと。」

「くそ!でりゃぁ!」

「ふいっと。」

「てめぇ!避けてんじゃねぇ!」

「なんなんだお前は…当たれば満足か?」

「ああ!避けんじゃねえぞ!」

ガン!

「え?あ、当たちまった…」

「ふむ…全く痛くねぇ。」

「な、てめぇ!当たってんじゃねえよ!避けろよ!もう少しで人殺しになる所だっただろうがぁ!」

「さっきからなんだ?当たって欲しいって言うから当たってやったのに…今度は避けろってか?」

「当たってやったって…なんでお前死んでないんだ!?」

「さぁ?防御が高いからじゃねえの?」

「そ、そうか?」

「んじゃ、そういうことで。」

「じゃあね〜盗賊さん。」

「お、おうまだな〜…ってまたんかーい!」

「…」

「…」

「またんかー…「聞こえてるわ。」ぶふぉ!」

「なんなんだよ…先を急いでるんだ。用なら後にしてくれ。」

「そ、それは申し訳ない。」

「ああ、じゃな。」

「ああ、また後で…ってまたんかー…「しつけぇよ!」ギエピー!」

「なんだったんだこいつは…」

グロックはその場で伸びていた。

「いいじゃん。行こいこ。」

「…ああ。」



しばらく進んでいると茂みからまた男が出てきた。

「止まれ。」

「…なんだ、次から次に…さっきのノリツッコミ盗賊の知り合いか?」

「そんなものは知らん。私はお前達を探しに来たのだ。」

そう言うと男はミーシェのことを見つめる。

「な、何?」

「…やはり…やはりミーシェ様!ミーシェ様でございますね?!」

「え、ええと…え?」

「私でございます!貴方様の使いの執事であったバトラーにございます!」

「バ、バトラー?!わぁ!久しぶり!」

「お久しぶりにございます。貴方様が蘇ったと聞いて私は必死に探しましだぞ!」

「元気そうで良かったぁ。」

「…で?俺を無視して話を進めないでくれるか?」

「あ、ごめん。」

「知り合いなのか?」

「うん!私が復讐神になる前、お姉ちゃんのお城に住んでた時の私の執事さん。」

「お初にお目にかかります。ミーシェ様の執事のバトラーと申します。ユウ様。ここまでの護衛本当にありがとうございます。」

「ここまで?」

「そうです。さぁ、ミーシェ様。私達は密かに城の再建をしておりました。新たな城に帰りましょう。」

「え?帰らないよ?」

「な、何を仰っているのですか…さぁ、早く。」

「ストップストップ!ミーシェを連れてくって?そんなことさせるわけねぇだろ?」

「…ここまで護衛してくださったのは本当に感謝致します。ですがここからは私共の仕事です。」

「バトラー?」

「はっ。なんでございましょう?」

「私は城には帰らない。」

「な!どうしてですか?」

「私はユウと一緒に宝玉を破壊する旅に出てるの。それが終わるまでは帰らないよ。」

「それでしたら私達が魔神軍を再構築して既に取りかかっております。ご心配せずに。」

「…はぁ、あんたらだったのか魔神軍は…」

「はい。そうでございます。」

「今のところ何個壊したんだ?」

「はい。既に二個…「その二個を壊したのは俺たちだからな?」」

「な!?なんと…」

何自分たちの手柄にしようとしちゃってんのこいつ。

「この通り俺たちはやって行けるから大丈夫だ。」

「うん、ごめんね?バトラー。」

「そ、そんな…あなた方が…失礼ですがユウ様ステータスを見せてもらっても?」

「ああ、いいぞ。」

別にミーシェの知り合いなら困ることもないので特に隠蔽もせずに見せてやる。

「こ、これは!…あ、ありがとうございました。」

「ああ。」

するとその瞬間バトラーはその場に土下座をした。

「え?何?」

「お願いがございます。」

「なんだよ?」

「どうか…どうか魔神軍のリーダーになってください!」

うん…なんか来ると思ってた。

「…却下。」

「な!頼みます。」

「リーダーはあんたがやってくれ。…ただミーシェの仲間なら少しなら協力してやる。ピルークの時も失敗したんだろ?少しは手助けしてやるよ。」

「ほ、本当ですか!」

「ああ、できる限りだが…」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「お、おう。」

こうして魔神軍と少し妙な契約を結んだのだった。

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