4話 テンプレ?なにそれ?美味しいの?
うーん…頭いてぇ…
頭痛により目が覚めた。
「…知らない天井だ。」
言ってみたかったんだよこれ。
横に目をやると、江ノ島さんがベットに顔を伏せ眠っていた。
看病してくれてたのか。
「むにゃむにゃ…優く…ん。」
なにこれヤバい!超緊張すんだけど!誰も見てないよな…
ワンチャン童貞捨てちゃう?…っておバカ!何考えてんだ俺は!
「…むにゃ…ん?優くん?目が覚めたの?」
ちっ!起きちまったのかよ!
「ああ、看病ありがとう。」
「ううんへーきへーき。それよりもう大丈夫?」
「少し痛むけど大丈夫だよ。」
「そっか…よかった。」
橘との勝負は例えではなく一瞬で終わった。橘に距離ん詰められ、
訓練用の木刀で一発KOだ。我ながら情けない。
…だってしょうがなくね?ステータスの差1000以上あるからね?
いくら特訓したって勝てるはずがない。
テンプレ通りならばどうなっていただろうか?想像してみた。
橘が一瞬で距離を詰めてくる。しかし俺にはそれは関係なかった。
何故ならば橘の攻撃が遅く、いや止まって見えたからだ。
それを難なく片手でキャッチすると俺はもう片方の手で持つ木刀を振り下ろした。頭に直撃したため、橘が気絶する。そして一言いってやる。
「ステータスが全てじゃない!それが分からんなんてまだまだひよっこだな!橘ぁ!ハッハッハ!」
「かっこいい!優くん!」
ってなる予定なのになんだよ!テンプレだろ!ちゃんと回収してくれよ!ちなみに最後のは江ノ島さんw
「…はぁ」
「…やっぱり悔しい?優くん?」
「そりゃね。一矢報いてやりたかったよ。なんで俺こんなステータスなのかな?」
目尻に涙が浮かんだ。
そうだよ!悔しいんだよ!今から泣くよ?引くぐらい!
「くそ!うっ…うう…ちくしょう!うわぁーん!」
「…優くん…」
あっ、江ノ島さんいるの忘れてた。
「えっとこれは違くてですね、ちょと叫んだだけであって…」
終わった…よりによって江ノ島さんに。引かれたな。
しかし、江ノ島さんは俺を胸に引き寄せこういった。
「辛かったよね。泣いていいんだよ?ほらっ私の胸かしてあげるから。」
また涙がこみ上げてきた。目にゴミが入ったみたいだ。
「うっ…うう…悔し…かった。嫌いに…なった。弱い自分が…」
「辛かったよね。でも今全部吐き出していいからね?」
それから5分くらい泣き喚いた。そりゃもう引くくらいに。
「……ごめん、江ノ島さんありがとう。大分楽になったよ。」
「ううん。大丈夫。それに中学時代こうして慰めてもらったから。」
「…えっ?中学時代?」
「そっか…親の離婚で苗字変わったし、2年生になる前に転校したし、大分イメチェンしたから覚えてないよね…」
「1年の時…」
「私の前の苗字は神原っていうの。神原菜々。覚えてない?」
「もしかして…なっちゃん?」
「そうだよ!やっと思い出してくれた。」
神原菜々。中学1年の時同じクラスになり、すごく静かで前髪で顔を隠していたため、馬鹿にされ、虐められていたのを助けたのがきっかけで、俺たちは出会った。それからはとても仲良くなり、俺がアニメやラノベ好きオタクだと言ったら、その話を真剣に聞いてくれた。しかしまだ虐めは続いていたようで、それを知った俺がタイマンはったこともあった。それからはさらに仲良くなったのだが、親の転勤で引っ越すことになりそれ以来会うことは無いと思っていた。
「なっちゃんか!全然気づかなかったよ!」
「へへへ、驚いた?」
「驚くに決まってるよ!なんで言ってくれなかったのさ!」
「だって、気づいて欲しかったんだもん!普通気づかない?」
「それは…ごめん。でもすごく変わったから…」
「…ねぇ、覚えてる?優くんが私のために、男子5人と喧嘩してさ、そのあと泣いてた私を慰めてくれたの。その時言ってくれたんだよ?「胸貸してあげるから全部吐き出していいよ。」って。」
何その時のおれ。超イケメンじゃんw
「そっか…そんなこともあったね。
「だからね。辛いことがあったら溜め込まないで私に言って?胸でもなんでも貸してあげるから!」
「…ありがとう、なっちゃん。」
すると部屋のドアが開いた。
「よお!藤山!いい戦いだったなぁ?」
橘とその取り巻きが入ってきた。
「肩慣らしにもなんなかったぜw」
「ちょっと、たちば…」
なっちゃんが言いそうになったのを俺が止めた。
「いいんだ。」
「でも!」
「大丈夫。いやー強くて手も足も出なかったよー。流石だな!」
「ふ、ふん当たり前だ!お前なんか相手にならねえよ!いくぞお前ら」
こうして橘たちは去っていった。
「良かったの?優くん。」
「ああ、反発しても余計貶されるだけだしね。」
「でも…」
「それにこれから強くなればいい。それで見返してやるさ」
「そうだね!応援してる!でもそれまでは私が守ってあげるね?」
「そ、それはまぁ…頼みます…。」
これから強くなろう。そう決心した。
王室
「セバス、藤山優の様子はどうですか?強くなる見込みはありそうですか?」
「結論から言えば難しいでしょうな。彼には強くなれるスキルもステータスもない。」
「…そうですか。なら仕方ありませんね。今まで通り生け贄と言う方針で行きましょう。これまで通り監視は頼みましたよ。セバス。」
「はっ承りました。」
「…しかし藤山優。少しは使えると思ったのですがね…」
王女とセバスのあいだで不審な会話があったことを俺は知る由もなかった。
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