第6話 天皇陛下の屋久島御来島

第6話


   天皇陛下の屋久島御来島   著作者:乙音メイ




   

 宮中の歌会始めで歌われる「初め」という言葉が入った短歌を募っている記事を見て、

「語り初め 

 我が主と共に

  見る銀河

    星の内側」

という短歌を、半紙に墨で書いて東宮御所にお送りした。採用の分には、歌会始に招待する、とあったことで、俄然作る気になったのだった。


 私が歌った「しゅ」とは、ツインフレームのジーザスたちのことである。これは、時空を超えた恋文である。朗々と、

「……、かぁ~~~~~~~~~~~~たぁ~~~~~~~~~~りぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~め~~~ぇ……、わぁ~がぁ~しゅ~~~~~~~~~~と~共にぃ~~~……、見~~~~るぅ~~~~銀河」

と、このように訓練を積んだ宮中の歌詠みの方に、私の歌を詠んでいただける幸せを夢見た。バックには、雅楽の音色。

 澄んだ青空に、色とりどりの風船が高く昇っていくように、思い出すたびに夢がふくらみ、空高くマザーシップまで飛んで行った。

 私は早速、眞子さま的な雰囲気のする、オフホワイト色のフランス製のジャガード生地を使用して作られたワンピースを購入した。ワンピースに合わせ、上品なベージュ色のサテン生地のサンダル風のパンプスも購入した。採用された人には通知が来るはずだった。




 八月に歌を送り、秋も深まる十一月に天皇陛下と皇后陛下が御来島されるという立札を屋久島空港近くで見た。屋久島発の歌会始め用の短歌が、「満点の星空ロマンチックツアー」を、引き寄せたの? と思った。

 または、私の送った短歌が、まさかとは思うけれど、宣戦布告的に受け止められたりは……。

 そんな風に思ったのは、その日が近づくにつれて、ケムトレイルの飛行機が、一日に何基も何基もやって来るようになったからだった。屋久島島民丸ごとケムトレイルの毒物にさらされた二週間だった。

「屋久島にケムトレイルの毒を散布したら、天皇陛下と皇后陛下のお体にさわるかもしれないのに、何てこと!」

と、私は少し憤慨した。同時に、何者が、

「事前に散布しろ」

と、これを命じているのかと、疑問符が頭の中いっぱいになった。

 でもこれはついでで本当の目的は、馬毛島の撮影の方だったのかもしれない。




 十一月、天皇陛下と皇后陛下がいよいよ屋久島に来られた。夕方六時頃の飛行機で来られた。翌日は、縄文杉まで行くご予定になっているようだった。


 縄文杉登山はすばらしい。夜明け前に乗り込む路線バスには、人種や国を超えて、山や自然を愛する人々がたくさん乗車している。そしてこれから出会う縄文杉に、誰もがワクワクしているのだ。

 朝露に煙る緑の深い森と、昇る朝日のほっとする温もり、光を受けて輝く植物の美しさ、でもハードな面もある。2015年8月のことを思い出すと、登ったトロッコ道のレールの間の板と板の間隔が、自分の歩幅にマッチしていれば足への負担は少ないかもしれない。登山用ステッキもあれば、使ったことがなくても自然にステッキが体を運んでくれる。

 ただ、靴の中で足が泳ぐようでいると、足の親指の爪が靴の先に当たって紫色に変色し、一か月後、ポロリと爪が落ちる。でも心配は無用。下に薄く新しい爪が再生されているので安心。私の体験談である。

 早朝スタート、十一時には下山し始め、お昼過ぎに登山口に着いた。お土産屋さんのようなところで、やさしそうな顔をした男性3人が、笑顔で「登山協力金500円」を呼び掛けていた。でも何故か私は、300円でいい、と言われた。まさか、中学生料金? 香りのよい杉の箸置きまでいただいた。

 その後、バスを待って山道を下りた。下のバス停に着いた頃には、歩くと膝が大笑いした。ベンチがあって本当によかった。このようなことは初めてで、ものすごく恥ずかしかった。

 



 両陛下にはたぶん、トロッコにお乗りいただいたとは思う。そして、本格登山道では、背負子で縄文杉まで行かれたのではないかとも思う。ともかく怪我なくお戻りなのは嬉しかった。縄文杉登山の翌日は休養(三日間休養でもよかったのに)。翌々日は、町内観光。そして、その次の日の夕方6時半頃の飛行機で、お帰りになられた。




 数日たってから、恵比寿団地E‐3棟の集合ポストに「陛下退官」といった一面大見出し記事の南日本新聞社の新聞があった。号外として、新聞配達の方が置いて行かれたのだろうか。天皇が北朝鮮人とすり替えられた話があるけれど、ナマズのご研究や野鳥観察など、自然がお好きな天皇家の方々の、それぞれお好きな分野の研究結果の論文なども読んでみたい気がした。お優しい笑顔の天皇陛下と皇后陛下がいつまでもお幸せにお過ごしになられますことが、私たちの心の平安でもある、と痛感したことだった。

   



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