第5話 ドレスコード「金魚」

第5話


   ドレスコード「金魚」   著作者:乙音メイ

 




 山海賊たちの厚顔、何事にも強欲なその奸計と振る舞いは、平和を愛する人々の心に深い傷を負わせた。いたいけな子ども、男性女性を問わずに。


 その凶暴さには、代々の年季でも入っているのだろうか。中国では、大虐殺のあった場所の遺骨の埋蔵方法に、数キロにも亘った十文字に埋めるというのがある。NHKのドキュメンタリー番組で、そのようなナレーションを聞いた。おびただしい人数の遺体で、全員首の骨が曲がっていることから、生き埋めにされてしまったことがわかる、と言っていた。見たくなかったので、聞いた。馬子島の滑走路も、X字よりどちらかというと、十字に見える。この下にも、山海賊たちによる虐殺の犠牲者が埋められている。私が思い描いた憎めない穏やかな山海賊は少数派か、または全然いなくて、血に飢えた悪鬼のような台湾北朝鮮中国流刑罪人山海賊一味だったのだろうか。



 林芙美子が屋久島に来島するときに鹿児島本港で見た、大勢の乗船客が手にしていた「金魚」は符丁だった。言論統制下の中国では、自分たちの意思を伝える方法として、符丁はすでに古くから用いられていた。


   *

 

 「金魚」は、中国大陸にいる中国人と、中国山海賊連中を結びつけた。「浮雲」の章でも書いたけれど、「たこ焼き」イコール大阪、「雷門」イコール浅草のように、中国の人にとって「金魚」は、浙江省イコール霊山と誉れ高い「天台山」を思い浮かべるようだ。天台山は天○宗法○経だ。


 ドレスコード「金魚」で呼び寄せたのが、まじめに精進をはぐくむ天○宗とは無縁の流刑にあった山海賊たちと知ったとき、こんなはずでは、と絶望を味わった中国人もいるかもしれない。

 山海賊たちは、これらの金魚の中国人にも日本人にも、ある程度いい顔をしなければならなかった。何につけ天罰が下る、と脅しをかけた、ばちありきの山海賊版法○経が出来ていった。地震などの天候まで、ばちにされている今日の有り様だ。


   *


 おかげさまで、台湾北朝鮮中国流刑罪人山海賊来日72周年を経た現代の日本において、符丁は受け継がれているらしい。私が知る限りでは天候や事故以外の理由から、J○東日本のラインを止めるという大迷惑なものもあった。ある小売り業の大企業の符丁として使われる場合には、その県の中で一番大きな支店の最寄り駅と、止める原因の発生した駅まで、その間が何駅あるかで秘密漏えいまでの距離感だったり、企業への危険度だったりするのかもしれない、と感じた。そうするとこれは、他の鉄道、航空系、船舶系でも流行っているのだろうか? いったい何が狙いなのだろう。各方面の経済活動にも影響があることを考えれば、

(「うちはもう財産有り余っているし」)

という立ち位置にある組織が、ちょっとストップかけといて的な脅し提携があるのかもしれない。 

 もっと素敵なことに使う符丁なら、楽しくワクワクするのに。


 いつだったか、場所を新宿御苑、日時も宇宙家族に事前に予約し、クラウドシップの写真撮影を個人で楽しもう、と企画したことがあった。その日は午前中2時間近く電車がストップした。あえて、個人個人にしたのだったが、「新宿御苑」を使うことが、それらの人たちの気に障ったのかもしれない、中央線つながりの信濃町も近いし、と後日思った。遅れたけれど新宿御苑に行って写した何枚かの写真がある。気持ちは少しへこんだけれど、クラウドシップはまだ数基残っていてくれて、その優しさが心にしみた日だった。


      *


 私は、ひらひらしたドレスの可愛い金魚のイメージを持っていたが、潜在的また多次元的に何を知っているの? もっともっと教えて、と作者に問いただしてみたくなる動揺があった。白秋さんは金魚のDNAの記憶庫が、何とはなしに読める方だったのかもしれない、そう感じさせる。



北原白秋 作

「金魚」


母ちゃん、母ちゃん、

どこへ行た。

 紅い金魚と遊びませう。


母ちゃん、帰らぬ、

さびしいな。

 金魚を一匹締め殺す。


まだまだ、帰らぬ、

くやしいな。

 金魚を二匹締め殺す。


なぜなぜ、帰らぬ、

ひもじいな。

 金魚を三匹締め殺す。


涙がこぼれる、

日は暮れる。

 紅い金魚も死ぬ、死ぬ。


母さん怖いよ、

どこへ行た。

 ピカピカ、金魚の眼が光る。




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※参考~北原白秋の創作童謡「金魚」の歌詞は、大正八年六月号『赤い鳥』(赤い鳥社)に掲載されている当時の製本印刷の「原書の歌詞」を記載しました。『池田小百合なっとく童謡・唱歌』参照により

http://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/doyobook/doyo00hirota2.htm#kingyo

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