第7話 ■達也■ Sex Machine / JAMES BROWN
オネエサマがアゴでフロアを指す。
どうせそう来るだろうと思っていたので、素直にカウンターをくぐる。幸いまだ他のお客さんは少なく、それも野瀬さんの常連さんだから、今のウチっちゃあ今のウチだ。金森さんをチラリと見ると「大丈夫だ」と、右眉で返事をしてくれた。
ハイテンションなイントロの中にオネエサマと飛び込んで行く。お客さん同士の踊りは良く見てるからステップは知っているけれど、実際『Sex Machine』を踊るのは始めてだ。8発のキックに合わせて軽く手を拡げながら歩み寄る。ほぼ密着状態でグラインド。この段階でウブな俺はちょと舞い上がる。しょうがねぇだろ、なんたって17歳♪ だ。
J・Bの「ゲランパ! ゲロウラップ!」というシャウトがフロアに突き刺さる。俺は腰を落としながら右脚をぐいっと前に出す。オネエサマはそれに合わせて左足を引く。グラインドして右脚を戻す。次の「ゲランパ! ゲロウラップ!」で左脚を出す。グラインド。この繰り返しだ。単調だけれど、かなり「熱い」ステップだ。
Get up !, Get on up !
イケねぇ……結構激しく動くもんだから『マグマ』が回ってきやがった。オマケに脚元はダンスにはもってこいの雪駄ときてる。脱げないように爪先で雪駄を押さえながらステップ踏むてぇのはナカナカ疲れるぜ。
Get up !, Get on up !
オネエサマはノリノリ! ヘッドバンギング! そんなに頭シェイクしたら『マグマ』が吹き出さねぇか? と心配になるが、その前に自分のコト心配しないとだ。今日はBカン守ってんだ、負けてらんねぇじゃんね。
グラインド。
Get up !, Get on up !
「ヒャホウッ! た~のしぃっ!」
(オネエサマ元気だわ。心配するコトないかも)
「たっちゃん!」
「ハイッ!」
「ぬるいぞっ!」
「ヘ?」
Get up !, Get on up !
「セックスしてるんだからさ、もっとガンガン来てよ!」
「エェッ!」
オネエサマは俺の腰に両手を廻してグイッと来た。
Stay on the scene !
(どっひゃあ~)
「ホラ、もっとぉ!」
like a Sex Machine !
(えぇいっ!)
俺だって手回しちゃうさ。マグマも手伝ってくれちゃうしさ。
しっかしクラクラするぜ。いろんな意味で。
Get up !, Get on up !
Get up !, Get on up !
Stay on the scene !
like a Sex Machine !
雪駄を押さえつけてるせいで脚がツリそうだったのも忘れてのめり込む。激しいステップとマグマのおかげで汗をかいたせいだろう、さっきのチークでは気がつかなかったんだけど、オネエサマの髪や襟元から淡い香りが漂って来る。俺も汗くさいかもしれないな。クラクラするのはマグマのせいなのか、それとも『オドール・ディ・フェミナ(女の匂い)』のせいなのか。
Stay on the scene !
オネエサマの両手は俺の背中をずり上がり、肩を引き寄せる。
like a Sex Machine !
滾る! こんなダンスは初めてだ!
頭ン中ではマグマが沸騰し、下半身では俺の血が沸騰している。
Get up !, Get on up !
Get up !, Get on up !
Stay on the scene !
like a Sex Machine ! ……
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