第5話

 話を夫の行動に戻しましょう。

笑美の夫は前述したように家庭では何もしなくなりました。正確に言うと、やってほしいことはやらないでやらなくていいこと、やってほしくないことばかりをやるようになりました。


長年、夫の行動に疑問を持っている笑美としては、どこまで我慢出来るかの我慢大会が始まるのです。


 皆さんの家庭でもこんなのどこの家庭でもあるよ、というあるあるネタから書かせていただきます。


筆者は妻の立場なので夫の立場での気持ちなどは正直分かりません。なので夫の立場の方には理解不能なこともあるかと思いますが、ぜひ「奥様はこんなふうに思っているのかもしれない」くらいの寛大な気持ちで読んでいただけるとありがたいです。


 1日の始まり。


朝は戦争です。

笑美は毎朝、四時前には起床します。子供のお弁当を作りながら洗濯機を回し、お弁当が完成したらゴミ捨てに行きます。それが終わると次は子供や夫の朝食作りです。


最初に子供を起こし、子供が朝食を摂っている途中くらいで夫を起こす時間が来ます。


まぁ、これが一苦労なのです。


子供は一度起こしただけでたいてい起きて来てくれますが、夫は何度起こしても起きて来ないのです。笑美は当時、自室からリビングに来た時点で食事を温めて出していました。


朝食が食パンの時には顔を見てからパンを焼いたりしていました。しかしこれがかなりの手間なのです。


笑美の夫は起きたらすぐに食べたい人。


自分が食卓についた時に食事が出ていないとあからさまにイライラしているのが伝わります。席で待っていてくれればいいのですが、待てずに台所(換気扇の下)に来てタバコを吸います。


これをやられると食事の入ったフライパンやら鍋やらが置いてあるコンロ前に来られて笑美はそこから食事を皿に盛ることが出来なくなります。夫がタバコを吸っている間に出来ることはコンロに置いたもの以外の(例えば食パンならトースターなのでコンロとは別のところにあります)、ものを先に使って食卓に出します。


でもトーストだけテーブルに出されてもそれを食べて待っていてくれるということはしません。すべてが揃わないと食べ始めません。


トーストの用意が出来た時点でまだタバコを吸い終わっていなければ、次はコーヒーなどの飲み物を準備し、テーブルに置きます。本来は冷めにくいおかずの方を先に出して、冷めてしまっては美味しくないトーストやコーヒーを一番最後に持っていきたいのですがね。笑美の夫はそんなところまでは拘っていないようです。いつだって笑美の夫は自分中心なので。


 ようやくタバコが吸い終わり、おかずも皿に盛ることが出来、テーブルに出せ、ようやく準備完了です。そこですぐに食べ始めてくれればいいものを、すべて揃っているにも関わらず今度はトイレに行ってしまったりもする夫です。


温かいものを食べてもらいたいという笑美の思いは毎日のように崩れます。

そこで笑美は考えました。


【時間が来たらすべてテーブルにセッティングしてしまおう】


と。


 温かいものが食べたければ余計なアクションはなくなるだろうし、冷めても構わないなら自分のペースで動くだろうと考えたのです。今までのやり方ですと、夫の食事の支度をしている間に子供が食べ終わり、その洗い物が出ます。


まぁ、笑美の家では子供は食べたものは流しに持って来てくれるのでそこは手間がありません。しかし、食べ終わった後は学校に行く準備をし、出発するという時間になります。笑美は毎日外まで出て見送ります。


 その外に出る時間に間に合わなくなるのが嫌なのです。子供は笑美の忙しさを考えて、時には「出なくていいよ」と言ってくれます。


でも笑美はそんな風に子供に気を遣わせてしまうのが辛いのです。なので、前述のやり方に変更しました。食事が出来る前に一度夫を起こし、その後食事をセッティング。セッティング後に再度起こし、そこからは五分おきに声を掛けます。


夫の自室に行くのではなく時には階段下から声を掛けたり、そんな時間がない時にはLINEで起こしたりします(LINEで起こす方が圧倒的に多いかも)。それだと何度も階段を昇降する手間が省けるし、他の家事をやりながら起こすことが出来るからです。


少しずつ考え方、みかたを変えて笑美自身の負担を減らそうと日々努力しています。ところがこの方法にした最初の頃は、夫も温かいものが食べたかったのか、割りとすぐに起きてきて食べ始めていたのですが、慣れて来たからなのか、段々起こしても起こしても起きなくなりました。


そして出勤時間ギリギリまで起きないことも増えていきました。当然、そんな時間に起きてきても食事をする時間はありません。笑美は昼や夜を抜いても朝だけは食事をしてほしいタイプです。


朝は脳が活性化されるために食事というものが必要だからです。


1日仕事をするのに脳が起きていないと効率も悪くなるし、思いがけない事故にも繋がりかねないからです。


夫はバイク通勤です。


家から会社まで自分の運転で行かなければなりません。その間、頭がボーっとして判断を間違えたら大きな事故に繋がります。もちろん職場に着いても脳が活動を開始していなければそこでも大きな事故の可能性が出て来ます。そういうことを避けさせたいので朝食はしっかりしたものを毎日作ります。そしてそれを食べてから家を出てほしいと願っています。


 しかし食べる時間がない時間に起きて来てはそれは出来ません。「少しでも食べて」と促すとおかずだけは食べていきますが、ご飯だったりパンだったりという主食は残します。そして、「これ、食べていいよ」と言います。


 ちょいちょいお待ち!


これ、食べていいよとは?食べかけを?自分が起きずに食べきれなかったものを?食べていいって言い方、ある?


 笑美の夫は、今までよくトラブルなく生きて来られたなぁと思うくらい言葉遣いが分かりません。常に上から目線での言葉遣いなのです。


せめて、「良かったら食べてくれないかな?」とか言いようがありそうな気はするのですが・・・


夫の辞書には【敬語】【尊敬語】【謙譲語】がないようです。


笑美は夫より目下の人間だと思われているからなのでしょうかね?(まぁ実際年齢は笑美の方が下なので目下扱いされても仕方ないのですが)

笑美に対してだけならいいのですが、どう考えても人に応じて言葉遣いを変えられるイメージが笑美にはありません。

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