家冷族

雪信英松

家冷族

 夏休みだ、他の家族は遊園地に行ったり、海や山に行ったりして遊ぶんだろうか、いいな、私も遊びたい、


「母さん、海行きたいです」


「ん」


「友達から旅行の写真送ってくんだよ、私もいきたいです」


「我が儘言わないの、返事は」


「はい」

 スマホを弄りながら顔さえ見ずに言ってくる、亮太はソファーに寝転がりながらスマホを弄っていた、


「亮太、どっかいきましょう」


「うん」


「亮太聞いてるんですか」


「はいはい聞いてますよ」


「だったらこっち見てよ」スマホを取り上げる、


「うるっせーな!黙っとけよ、つーか返せ❗」私からスマホを取り返す。


 姉さんは自分の部屋でずっとスマホを見て薄笑い浮かべていた、話すきも出てこなかった、


 暇だ、何か暇だ、友達は全員どっか遊びにいってるし、何で誘ってくれなかったんだよ、写真は送りつけるくせに、二階に向かい一番手前の部屋に入りベットにダイブする、私もみんなに写真送りつけたい、こう楽しそうだなって思える写真、


「送りつけたいなー」

 

 考え事が漏れた、何かなあ、ベットから起き上がる、勉強机の椅子に座り後ろに体重を預け浮かし天井を仰ぐ、することも思いつかない、母さんと亮太優しかったのになぁ、姉さんは昔から冷たかったけど優しかった、父さんがいなくなってから変わったけど、あまりにも、


「冷たいよ」


 フッワとした透き通るかのような変な感じがして頭を打ち付け椅子ごと倒れた、頭が痛いから頭を抱える、下を見ると絨毯に髪の毛が結構落ちていた、暇潰しに丁寧に一本一本取ってく、数十本ぐらい取れた、


「どうしよう、することなくなった」


 お腹の虫がなり響く、結構大きい、誰かが聞いてなくて良かった、聞いてたら死ねる、一階に降りてリビングに向かう母さんが椅子に座りまだスマホを弄っている、母さんにご飯を頼む、


「机の上に置いてあるから」


 食卓の上に500円が一枚置いてあった、家族揃って皆で食べるのが食卓なのに家族揃って皆で母さんのご飯が食べたい、皆で、手を合わせて、いただきますって、夏休み関係なくこれだけはしたいな、


「いってきます」

 お金を握り閉めて玄関を出る、返ってこなかったな、空は何処までも澄みきった蒼で所々ある雲が白く綺麗だ、叫びたい衝動をこらえコンビニに向かう、


 コンビニは本当に何処にでもあるから良い、少しスーパーより高いけど、夏はやっぱり暑いから汗がすごい、コンビニに入った瞬間地獄と天国の違いが感じた、店員さんの挨拶が何故か気持ちいい、母さんも弟も挨拶すらなくなった、何故か心がキリキリする、


 弁当コーナーには兎に角何々弁当が多い、唐揚げ弁当を手に取りレジに向かう、ふと右を見る、そばがあった、夏だと美味しいだろうか、


「あれ美咲、宿題ちゃんとやってるのか」


 肩を叩かれて振り向くと担任がいた、服が普通だ、顔も普通だ、身長も性格も体力さえ普通の先生だ、普通が取り柄の先生だ、


「失礼な事を考えてなかったか」


「いえ特には、先生こそこんな所で出くわすなんて、ストーカー?」


「そこは普通、運命ですねだろ」


「普通に気持ち悪いです」


「ん、二つ食うのか」手に持ってる弁当を指し言う、


「そこまで入りません、て言うか先生は何しにコンビニに?」


「いや、特には、ほら、俺の兄貴ってさこう、アウトドア好きで川下りにも付き合わされたんだけど、まあ、普通に楽しかったのわ別にいいか、暇潰しに」


「自慢と皮肉を混ぜた返しうざいです」


「嫌々違うから」


「分かってます」


 唐揚げ弁当を元の場所に戻し、ソバを買う、コンビニから出ると天国から地獄に転落した気持ちになる、まあいいか、帰った。家に着き少し躊躇ったがただいまっていった、けど返ってこなかった、寂しいな。


 リビングで買ったソバをつゆを掛ける、食べる、啜るとよくこの静寂と化した部屋によく響くのが嫌でまるで家族がいるのにいないみたいのが寂しいから音を発てないように静かに、静かに、食べる。物取りなさを感じ一緒に付いてたわさびを入れるとよく分からない深みが出て美味しかった、新発見、


「母さん、母さん、蕎麦にわさびを掛けると美味しくなりました」


 誰も何も返さない、一言も、鬱陶しいのかな、立ち上がりゴミ箱に捨てて部屋に上がる、ベットに座り、横に倒れて何が悪いのか考える、よく分からない、家族全員で遊んだり、意味ない話をするのが駄目なのかな、私が悪いのかな、夏休みなのに、寂しい、


 ベットに置いたスマホが振動して、晃からだ手に取り画面をスライドさせラインを開く、たった一枚に楽しさが伝わる写真に一言添えられたもの、私は胸にスマホを抱きしめる、皮をなぞるように水滴が流れていた、写真に一言にこう書かれていた、

ーー両親と◯□▧▤でキャンプ


「羨ましい」

 何で何で私の家族は冷たいの、夏休み結構楽しみにしていたのに、何か変わると、信じてたのに、それに今日は私の特別な日なのに、



 ゆっくりと目を開けて起き上がる、窓から見える景色は暗い風景に家ばかりで何故か悲しくなる、扉を開けて部屋を出る、階段を転ばないようにゆっくりと、一階に降りてリビングに向かう、暗かった、でも目が寝ていたせいかよく見える、いつも閉まっている引き戸が閉まっていた、


 引き戸を開ける、眩しくてよく見えなかった、段々と目が慣れて行き食卓に亮太と母さんが食卓に座り、姉は興味無さそうにそっぽを向いていて、食卓には白いホールケーキがあった、頭が真っ白になる、


「おい、姉さん早くしろ、ケーキ早く食べたい」

弟はケーキに釘付けになりながら言ってくる、

「美咲、誕生日くらいは祝わないと流石に駄目だからね」

母さんが久しぶりに顔を見てくれた、

「ねえ、早く終わらせて」姉さんは興味無さそうに、


「こらっ、誕生日を祝いにそう言う事言わないの」


「・・・わぁったわよ」


「口が悪いわよ」


「母さん良いの別に良いのよ、早く食べましょ」

 そういい私はにやけそうになる顔を必死に抑えて席につく、ろうそくも何もない、少し求めてたのとは少し違うけど、


 誕生日の歌を姉は小声で歌い亮太は恥ずかしそうに、手を叩き歌う、やりたくて堪らなかった手を合わせて頂きます、母さんがホールケーキを切り分けて行く、亮太は意義ありと、


「美咲のだけ二個とかずるい、俺も」


「馬鹿ねえ、美咲は今日の主役よ」


「うるっせえよババア」


「母さんにそんな口聞かないの!」


「良いの母さん、亮太はい」私は亮太にショートケーキを1つあげる、亮太は昔みたいな笑顔で喜んだ、フォークを刺してかぶり付く、幸せそうにモグモグと聞こえる程に、姉さんは少しづつ大事に、私もフォークで切り分けて食べる、美味しい、涙が止まらない、裾で何度も拭おうと涙が止まらない、


「美咲、美味しくて泣いたか」


「大丈夫?美咲」


「泣く要素あった?」


「う"ん"あ"だ」

 涙が止まり皆で談笑する、皆スマホのアプリで何をしているとか、亮太がゲームに課金しているのがバレて母さんに怒られたり、笑った、久し振りに笑った、まるで夢のような時間だ、


「美咲、一応準備しといたぜ、ほら」消しゴムを投げ渡してきた、嬉しさが込み上げ無くさないように握り閉める、


「私準備してないから期待しても無駄よ」


「もう、恥ずかしくて聞けなかったけど、何がいい」

突然言われても分からない、どうしよう、欲しい物は、あった、


「母さん欲しい物はね、愛されたい、私を冷たくしないで、話すとき私の目を見て、私とお喋りして、私と一緒にご飯が食べたい」


「そんな事でいいの」


「うん」

 此れからは家族皆で、お腹一杯になり、腹を擦りながら洗面所で歯を磨いてく、洗面所に亮太が入り一言、


「ごめん」


 そう言い亮太は洗面所を出た、私は鏡を見て近くにあったハサミで喉笛を切った、血が鏡に勢いよく当り血を撒き散らしながら、目が覚めた。ベットから起き上がり外を確認すると、暗かった、何故か虚無感に駆られながらも一階に降りてリビングに入り、そこには何もなかった、現実を見ても亮太が私を謝る事なんてない、冷蔵庫を開けて冷えたご飯を取り、レンジでチンして食べる、


 見た夢は朧気ながらも覚えてる、妄想だ、仮想だ、空想だ、幻想だ、それでも夢ぐらいみったていいじゃないか、

「何が悪い❗」

家族と皆でお喋りがしたい、話すときに私の顔を見て、私は皆と一緒にご飯が食べたいだけなのに、涙が止まらない、裾で何度も拭っても、涙が止まらない、寂しい、何で私に誰も家族も友人も私に構ってよ。


「私を一人にしないで」


 息を殺すように声が漏れないように、抑えて、抑えて、誰にも、何も聞こえないように、誰にも気づかれないように、一人で泣く。冷たいな、寂しいな、悲しいな、明日は何か変わるといいな。




 

 

 







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