第7話
ステータス。
それは洗礼時に与えられるもの。
その能力をランク付けし、見やすくしたもの。
このルイナスにおいて、ステータスはその人を表すものだ。
つまり、この人が強いのかどうかの指標であり、称号などはこの人に危険な点がないのかどうか、ということを見分ける一つの指針なのである。
各ステータスはGランクから始まり、最高Sランクといわれている。
無論歴史上、それ以上のステータスを持った人物もいた。
一つでもSランクを持つことは祝福であり、それ以上のステータスは歴史の中でもどれか一つのステータスに限られていた。
しかもそれは一千年前だとか、おとぎ話の人物のステータスとして描かれ、真偽が怪しいと思われているようなものになってしまっている。
僕はもう一度自分のステータスをみる。
物理攻撃力に関連するSTRはCランク、魔法攻撃力に関連するINTはD-。
これは仕方ないだろう。筋力なんてそれほどある訳ではない。なにせ子供の身体だ。
ステータスは素の状態が表示されるため、こんなものだろう。
魔法攻撃力については言わずもがな。
魔法理論のみで詠唱や構築、発動は全く行なっていない。
しかしそれ以外がとても、いや「異常」に高いのだ。
Aランクだって普通珍しいのに、Sランクが二つ。
極め付けは防御系の
そして
何と無く想像はつくが、見なかったことにしたい。
それよりも。
魔術ってなんだろう。魔法じゃなかったか?
本音として見せたくないが、約束しているからな……
どうにかできないものか。
途方にくれながらステータスを眺める。
……ん?
なんか良さそうなものがある。
「
そう書かれたスキルだ。
しかしどうやって使うかわからない。だいたいこういう時は鑑定系のスキルがあると詳細がわかるのだが……
しかし、なんとも理数系の匂いがするスキル欄だな。
「
「
そして「
どの程度の数学が使えるかはわからないが、とある学園都市最強の少年みたいなベクトル操作とかできるのだろうか。
それともコンピュータでも作れというのだろうか。
一応情報系出身者なので、理論はわからなくはないが。
うーむ、どうしたものか。
……あれ? 「
試しに「
「……【
================================
【
鑑定系スキル。あらゆる物質やスキル、
状態や事象の解析が可能。
道具やスキルについては使い方も確認できる。
パッシブで発動はしない。無詠唱スキル。
================================
完全に意味は掴みづらいが、鑑定系スキルでも上位のものではないだろうか。
まあ、パッシブではないというのは惜しいが。
レベルが上がればパッシブ型になるのだろうか。
そして無詠唱スキルということなので念じればいいということか。
よし、まず「
ステータス内の「
================================
【
隠密系スキル最終形。
自身の動作だけでなく気配、魔力その他痕跡等
隠蔽するスキル。
自身のステータスの記載修正、隠蔽も可能。
スキル使用者は元のステータスが確認可能だが、
解除しない限りはステータス記載は隠蔽される。
無詠唱スキル。
上手く使いなさい。
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結構とんでもないスキルです。
隠密スキルの最終形ということは、上手く使えば偵察やシーフ系能力として役立つということだ。
しかしステータス記載の修正は助かる。どの程度にするかな。
まあ、あまりSランクを見せない程度にするか……?
しかも最後に「上手く使いなさい」って書いてあるってことはあれか、七柱神からの分ということか。
ありがとう神様。こんなオーバースペックを与えてくれて。
* * *
修正が終わった。
結局、称号の部分は隠蔽のみで修正はできなかった。
ここは仕方がないのだろう。
さて、修正がおわったので家族に見せに行くか。
「お待たせしました」
「お、降りてきたかい。どうだった?」
「きっといっぱい祝福をもらったのよ。素晴らしいに決まってるわ!」
両親は大はしゃぎである。
「レオン、どんなのになったんだろうね? 楽しみだねセルティ」
「な、なんで楽しみなのよ! 別に楽しくないし! ステータス負けたくないし!」
子供なのに既に性格もイケメンのハリー兄と、意地っ張りのセルティ姉。
セルティ姉は何でこうも意地っ張りなんだろうか。少し意地悪言ってみるか……?
「ハリー兄様、セルティ姉様は僕のことが嫌いなんですか……?」
狡いかもしれないが、兄を巻き込んでみる。
「なっ……! そ、そんなつもりじゃ……」
「どうなんだい? セルティ?」
セルティ姉が狼狽える。ナイスだ、ハリー兄。
「も、もう……嫌いなわけないじゃない。何言ってるのよ、もう……」
そう言いながら、わしゃわしゃと頭を撫でてくる。
うん。わかってはいたが、嫌いなはずがないな。
いい姉だ。もう少し素直になれば可愛げがあるんだが。
お礼として、最高の笑顔をプレゼントしておこう。
そう思ってかつて両親に見せた笑顔の半分くらい威力のある笑顔を見せた。
——あ、真っ赤になった。
いかん、姉をイジりすぎた。
ステータスを見せなければいけないんだったな。
「すみません、今からステータスを見せますね。——【ステータス:パブリック】」
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名前:レオンハルト・フォン・ライプニッツ
年齢:5歳 性別:男性 種族:人族
レベル:1
スキル:
称号:なし
加護:七柱神の加護(世界・生命・天地・魔術・商業・武芸・芸術)
《ステータス》
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結構頑張って修正したと思うが……ちょっと反応が心配だな。
「「「「「——ん?」」」」」
皆が同じ顔をしている。
あんぐりと口を開けて、変なものを見たような目つきをしている。
え、どういう反応だ?
修正したんだがどうしたんだろう。
「「「「「「Sランク!?」」」」」
見事にハモってます。
まあ、実際はSSランクなんですけど。
「レオンちゃん……?
「何ででしょうね……」
ステータスの理由なんて聞かれてもわからない。
「しかし凄いな! 防御力は高いし、力だってこのステータスなら新人騎士と戦えるんじゃないか?」
父上は上機嫌である。
「しかし……魔術と式術ですか……聞いたことがないスキルですな」
マシューがそうつぶやく。何だって?
「どういうことマシュー?」
「まず、式術というものを聞いたことがございません。そして……魔術というのは魔法のことだと思いますが、普通『〜属性魔法』とスキル欄には書かれるのですぞ」
確かに。属性魔法の種類が書いていないんだよな……
ふと、母上の顔を見てみると、ものすごく真剣な顔になっていた。
「魔術……もしかして……でも普通考えられないわ……」
「母上どうしましたか?」
「うーん……ウィル君たちに頼んで、例の検査をしてもらうかしら……私だけの権限では動かせないし……」
返事がない。
母上は何か考えながら、ブツブツ呟いている。
「まあ、素晴らしいステータスになったんだ! とにかくこれから本宮殿に入るぞ! 準備はいいか?」
父上が考えに耽る母を引っ張りながら促す。
「そ、そうね。早くみんなに会いに行きましょう。レオン? しっかりなさいね!」
母上が立ち直った。
「では、行ってらっしゃいませ、旦那様」
マシューたちが見送ってくれる。
「しかしすごいステータスだったねー。さすが俺の弟だよ」
ハリー兄は優しいなあ。
「もう。最初沈んだ顔してたわよ。べ、別に心配したわけじゃないけど……ステータス、よかったじゃない」
セルティ姉にも慰められる。そんなに顔に出ていたか。
「ありがとうございます、ハリー兄様、セルティ姉様」
* * *
「王宮に到着だ!」
「早っ」
離れから徒歩五分ほどで、本宮殿に到着する。敷地内だしな。
本宮殿に立つ衛兵たちにも挨拶すると笑顔で迎えてくれた。
しばらく宮殿内を進むと、色々な人たちが廊下を行き交っていた。おそらく官僚の貴族やその部下たちなのだろう。
しかしさすがは公爵家。
真ん中を堂々通っていくと、周囲の人たちが自然に道を空けてくれるのだ。
その皆に微笑みながら軽く会釈をして歩く。深々とすると問題らしいのだ、立場上。
三階に行くと、人が非常に少なくなっており、衛兵たちが多く配置された階層に到達した。
周囲から感じる雰囲気は高貴で、豪華だ。
とある部屋の前には二人ずつ衛兵が左右に立っており、時たま中年の高位貴族らしき人物が出入りしているのが見える。
あの部屋はもしかすると……
「さあレオン。叔父上にはしっかり挨拶をするんだぞ!」
そう言いながら、父はその部屋の前の衛兵に合図した。
衛兵が中に向かって何か話している。
おそらく僕らが来たことを中に伝えているようだ。
すぐに扉が開かれ、衛兵から「どうぞ」と言われる。
いや、もう!? 心の準備が!
そんなことを思ったが、時すでに遅し。
部屋に通されると、高貴な雰囲気を持つ、父と同年代の男性が立っていた。
身にまとう服も高級であり、非常に丁寧に装飾がなされた物だ。
背は高く、マントで隠れているが、鍛えられていることが分かる身体。
プラチナブロンドの髪とグレーの瞳が美しく、今でも女性にモテるのは間違いない格好の良さだ。
その周囲には、母上と年が近い、髪がダークブロンドの美女や、プラチナブロンドの美女、兄や姉、そして自分と近い歳であろう美少年二人と美少女二人。明らかに家族だろう。
見とれてしまっていた。
内心慌てたが、表情に出さないようにしながら母上や兄、姉と共に膝をつき、礼をとる。
父が深く頭を垂れ、
「ただいま参上いたしました、陛下」
そう言った。
「うむ、よく来たな。そして初めまして、我が甥、レオンハルトよ」
これが、叔父上であり国王である、ウィルヘルム・アダマス・カッセル・イシュタリアとその一家との出会いであり、初めて近しい親族と出会った瞬間だった。
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