小問編

「おはよう、樹里ちゃん。早速だけど、出掛ける支度をして欲しいの」

 前日言われた通りに橋姫探偵事務所にやって来た樹里は、いきなりそんなことを言われて面食らった。樹里を部屋に招き入れた紫音は、昨日と同じ白いブラウスと黒い細身のパンツという出で立ちだったが、昨日とは違いブラウスにレースは無く、その上から駱駝色キャメルのトレンチコートを着ている。着ているというより、羽織っていると表現する方が近いかも知れないが。何しろ上着の前を完全に開けたままなのだ。

 樹里の場合、出掛ける支度をして欲しいも何も、出掛ける支度をしてここへ来ている訳である。故に、敢えてこれ以上するような支度など存在しないので、そのままタッチアンドゴーで良いだろうと判断した。因みに樹里は愛らしいセーターに膝丈のチェックのスカートという格好である。細くて綺麗な脚を露出しているが、残念ながら紫音はそれを見ても「寒そう」以外の感想が浮かばなかった。

「申し訳ないんだけど、急な仕事が入ってね。これから現場に行かなきゃいけないのよ。うちで助手することになるならいい機会だし、折角だから樹里ちゃんにも来てもらおうと思ってね」

 それは樹里にも理解出来る道理である。仕事に慣れるのは早い方がいいに決まっている。

「わたしはもう支度する必要ありませんけど……」

「あはは、そりゃそうよね。馬鹿なこと言ったね、私」

「そうですね……」

「いや、そこは否定してよ」

「あ、ご、ごめんなさい。つい本音が……」

「本音ではあるのね……」

 などと、気楽なやり取りを続けながら目的地を確認する。意外にも、歩いて30分程で着くらしい。

「いやはや、近場でよかった。ただでさえ急な仕事っていうのは面倒くさいのに、遠いと本格的に面倒くさいからね」

 紫音の言うことも一理ある。樹里も、課題やら何やらを急にやってと言われれば面倒くさいと思う。思うのだが。

「それはわかりますけど、あまり大きな声で言うことじゃないですよ?」

「それもそうだね。話し相手がいるのが嬉しくてついつい、ね」

「はぁ……。お友達とか、いないんですか?」

 おずおずと尋ねる樹里だが、逆に堂々と紫音は答えた。

「いないよ。そもそもここ3年くらい、つまり探偵を始めてからって事だけど、誰かと親しくしようとしたことがないかも知れない。私と他人の関係は、探偵と依頼人もしくは犯人ってとこだからね」

 意外だった。紫音は美人だし、明るくよく喋るから、友人も多いものと思っていたのだ。

「そもそも、何をもって友達と言うのかって話だよ。SFだとか最近だとライトノベルとかでよく見るシチュエーションだけど、主人公とかが命懸けで友を助けるシーンってあるじゃない?」

 訊かれても、樹里はその類の小説を殆ど全く嗜まないので、そうなのかと思う他なかった。

「私にはあれが理解出来ないのよ。現実でもさ、誰かを助けようとして亡くなる人のニュースとか見ると、本当に訳が分からなくなる。不自然なんだよ、人間として。いや、むしろ生物として、かな。母親が子供を庇ったって言うなら理解出来るけどさ」

 急に難しい話になってきた。世間には様々な人がいるのだから、多様性の問題と一蹴することも出来なかった訳ではないが、何だかこの話を少し続けたいような気分になって来たので、樹里は逆に尋ねた。

「紫音さんは、逆にどういう行動なら自然だと思うんですか?」

「自らを第一として、保身と欲望の為に行動する。これが一番自然なのよ。勿論世の中には素晴らしい人もいて、他人の為に動ける人もいるけれど、その人達は皆自律してるのよ。自分を律して他人の為に立つ。素晴らしいことね。素晴らしい綺麗事だわ。私はあまり好きじゃないけど」

「?  紫音さんも探偵として他の人の役に立ってるんじゃないんですか?」

「まさか。言ったでしょ? 私は道楽で、言い換えれば趣味でやってるの。自分の為以外の何でもないのよ。謎を解くのが楽しいからやってるの。そういう風に考えれば、人助けが楽しいからやってる人もいるのだろうけど、だからといってそこに命を賭けるのは違うと思う。生存本能は何処に行ったのかしら」

 いまいちピンと来ない。そんなことを考えたこともなかったし、人を助けようとすることがおかしいことだとも思えなかった。

「ま、考え方は人それぞれだからね。私には理解出来ないけど、ああいう人達で正しいのかも知れない。正しいとか間違ってるとかが存在するなら、だけどさ」

「そうですね……。あまりよくわかりませんけど、間違いということはない、と思いますよ。捉え方によってはよくないことに聞こえますけど、広い視野で考えれば悪い考え方じゃないとは思います」

 分からないなりに言葉を選びながら若干肯定すると、紫音は一瞬立ち止まり、微笑みながら話を続けた。

「賢い、いい子だね、樹里ちゃんは。普通の人なら『理解出来ない』とか、『相容れない』って言っておしまいよ、こんなの。しかも返答の仕方が上手いね。何も考えてない返事じゃなくて、ちゃんと考えて話してる。ともすれば適当に答えてるようにも聞こえるけど、そうじゃないことくらいは分かるわ」

「えっと……ありがとうございます」

「ふふ、ホントいい子」

 そう言って樹里の頭を撫で始めた。

「や、やめてください。子供じゃないんですから…」

 紫音はちょっと意外そうな顔をした。

「あら? 樹里ちゃんはまだまだ子供よ。そんなことを言ったら私もだけど」

 今度は樹里が意外だという顔をした。

「そういえば訊いたことありませんでしたけど、紫音さんっておいくつなんですか?」

「私? 18歳よ。貴女の一つ上。とはいえ、学校には行ってないけどね」

 樹里は仰天した。開いた口が塞がらず、その間の抜けた顔を見て思わず紫音は吹き出した。

「ぷぷっ、何その変な顔」

「だ、だって、普通に働いてるからもっと年上なのかと……」

「あら? そんなに老けて見える?」

「い、いえ、全然。むしろ大人びてるというか……」

「というか、何?」

「か、格好いいです、何だか」

 堪らず紫音は笑いだした。往来の只中であるにも関わらず大笑いしているので、樹里は急に恥ずかしくなった。

「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか……」

「あははは。ごめんね。格好いいなんて、面白いことを言うからさ。ちなみに、どんな所が格好いいと思う?」

「格好いいって面白いことですか……?えっと、紫音さんは……スタイルが良くて、常に堂々としてて、観察力もすごくて、とにかく言動が自信に溢れてるとことか、格好いいです」

 恥ずかしさから若干しっちゃかめっちゃかになってしまい、余計恥ずかしい思いをしながら羅列すると、紫音はまた得意気に胸を張った。

「ふふ。格好いいなんて言われたの初めてだけど、結構嬉しいわ。可愛いとかはよく言われるけど、身長170の女に可愛いって、あんまり似合わない気がするのよね」

「そんなことないですよ。大きさに関わらず、可愛いものは可愛いですって」

「そうかなあ。でも男の人って、小さい女の子の方が好きじゃない?」

「い、言い方に気を付けましょう……。それだと世の男の人がみんなロリータ・コンプレックスみたいに聞こえます」

「うーん、そうかもね。じゃあ言い換えよう。男の人って、身長の低い女の子が好きじゃない?」

「それは、そうかも知れません。けど、好みは人それぞれですから。ほら、えっと、『蓼食う虫も好き好き』って言うじゃないですか」

「それ、褒め言葉じゃないよ?」

 そんなどうでもいいようなことを話しながら歩けば、目的地まではあっという間だった。

 そこはどこにでもあるような、普通の住宅地の普通の一軒家だった。

「さあ着いた。どこかで所轄の警官が待ってるはずなんだけど──」

 と、紫音が辺りを見回した時、

「橋姫探偵!お待ちしておりました!こちらです!」

 という声が玄関の方から聞こえて来た。

「ああ、良かった。誰もいなかったらどうしようかと思ったよ。半ば無理矢理来たもんだからね。それと礼堂れいどう巡査、あまり往来に向かって橋姫探偵なんて叫ばないで欲しいな。別に隠してるつもりはないけど、探偵が何か嗅ぎ回ってると思ったら不快でしょう?」

 礼堂と呼ばれた制服巡査はきょとんとして、

「いえ、自分はなりませんが」

 なんて答えた。

「貴方の話じゃないわよ。近所の人の話。ただでさえ事件があったってだけで気分のいいものじゃないでしょうから」

「また、ってことは前にもあったんですか?」

 また事件が、という表現に引っ掛かりを覚えた樹里が口を挟んだ。丁度紫音の後ろに隠れるように立っていたので、礼堂巡査は驚いて飛び上がった。

「礼堂巡査、貴方よくその節穴みたいな目で警官やってられるわね…。と、それはともかく、この辺は事件が多いのよ。この辺というか、夏山市は、かな」

 後半は樹里の方に向き直って答えたので、紫音には礼堂巡査の表情が見えなかったが、捨てられた犬のようにしょぼんと萎れてる姿を見た樹里はちょっと不憫になった。

「そんなに多いんですか?」

 不憫に思ったことは間違いないが、それについて言及することは一切なく話を続けた。

「そうなの。市民がうんざりするくらいには頻発してる。実を言うと、私が夏山の中心地区に居を構えてるというか、事務所を構えてるのはそれが理由でね。単純に、この辺事件が多いからあそこに事務所があるのよ」

「そうだったんですか……。でも何でそんなに多いんですか?」

「それが分かれば我々も苦労しないのですが……」

 礼堂巡査が重々しく呟いた。

「ま、その話はまた後ですればいいと思うわ。今は現場検証が優先よ」

「失礼しました。ご案内します」

 礼堂巡査は一礼──ただし敬礼──をしそのまま現場に案内した。


 現場となった居間と思しき部屋は、足の踏み場も無いほど荒らされていた。そこかしこに衣服や食器その他、樹里には何だか分からない破片が散らばっていた。その中央に、人型の空白部がある。そこに被害者が倒れていたらしく、ビニールテープで白く型どられている。

「被害者はこの家の主人、宮島みやじま鷗輔おうすけ、58歳。職業は画家で、二階のアトリエで仕事をしていたと思われます。その筋では名の知られた人物だったようで、この家に多額の資産があったようですが、その行方は不明です。近所付き合いは無く、画家であった事さえ知っている人はいませんでした。死因は頭を強く殴られたことによる頭蓋骨及び脳の損傷。凶器は飾ってあった花瓶と思われますが、指紋を拭き取った形跡があるのみです。死亡推定時刻は一昨日の夜8時から10時の間です。第一発見者はこの家を訪れた友人で、何でも個展を開くことになったのでそのお祝いということでした」

「説明どうも、礼堂巡査。今のところの警察の見解は?」

「はい、部屋が荒らされていることと、金目のものがほぼ盗られている事から、押し入り強盗の仕業ではないか、というのが県警の見解です」

「呆れた。相変わらず警察は馬鹿ね。これが押し入り強盗の仕業ですって?そんな訳ないじゃない」

 心底呆れたという面持ちで紫音は言うが、樹里は警察の見解は妥当だと思った。

 事件についてはざっくりと話を聞いただけに過ぎないが、この状況を見れば誰だってそう思うだろう。何しろ家中の至る所を物色しているのだ。財産を探したと考えるのが普通ではなかろうか。

「少しは考えてもご覧なさい。死亡推定時刻はいつだった?」

「えっと、一昨日の午後8時から10時の間、でしたっけ?」

「そう。じゃあさ、仮に強盗の仕業だったとして、何でわざわざその時間に侵入したんだろうね?」

「それは……」

 答えに詰まる。確かに特別な予定でもなければ家の主人はその時間にはいることだろう。それなら何故敢えてその時間に侵入したのか。

「押し入り強盗なら手袋をしているだろうに、凶器には指紋を拭き取った跡がある。それは何故か。まさか偶々通りかかった無関係の人がいきなり押し入ったわけじゃないでしょう? さらに加えて、こうして見る限り被害者は豪勢な生活を送っていた様子はない。家具も調度品も全て安物。言い換えれば、使。じゃあ何で犯人は、一見すれば貧乏人みたいに見えるこの家に財産があると知ってたんだろうね?」

 誰も満足出来る解答を持ち合わせていない。偶々気紛れで押し入った家にお金がたくさん、などというミラクルがあるものか。

「つまり、これは知人の犯行ってこと。家に招かれていて、そこで何らかのトラブルがあって衝動的に近くにあった花瓶で殴った。その後慌てて指紋を拭いて、強盗の仕業に見せかけるために家中を荒らしてお金を盗る。これにはおそらく棚に仕舞ってあった軍手か何かを使ったのだろうね。だからそれ以降指紋は付いていない。するともう一つ、金品以外にも無くなっているものがあるはずよ」

「金品以外に、ですか?」

 礼堂巡査は少し考えたが、何も思い付かなかったので考えるのをやめた。

「あ、もしかして、カレンダーですか?」

「カレンダー? どういうことですか?」

 樹里の発言に、何も考えていなかった礼堂巡査が反応する。

「さっき紫音さん、『家に招かれて』いたって言ってましたよね? 家に誰かを招待する予定があるなら、それをメモしておくカレンダーとかがないと、うっかり忘れたりしたら大変じゃないですか」

「その通り。手帳かもしれないけど、何にせよ予定を書き込む何かがあったはずよね。でもそれを見られたら一発でバレてしまう。だから持ち去って処分したと考えるのが自然でしょう?」

「なるほど……。カレンダーの類は人によって置く場所は違いますから、一つや二つ持って行ったところで我々の注目を集めることはなかったのですね」

 礼堂巡査がさも当然のことだと言わんばかりにしきりに頷きながら言うが、実際には何も考えていない。

「この時点で言えることはそのくらいかな。あとは実際に調べてみないと何とも言えないわね」

 そう言って紫音は肩に提げていたポーチから、白い手袋を取り出した。

「樹里ちゃん、少し鞄持っててくれる? 調べるのにはちょっと邪魔だからさ」

「邪魔というならそのコートの方が……いえ、何でもないです」

 よっぽど邪魔じゃないですか? と言いかけてやめた。本人が気にしていないのであれば、余計なことは言わない方がいいだろうと思ったからだ。

「コートはね、捜査に必要なものが入ってたりするから、着たままやるのよ。裾を引き摺るようなものでもないからね」

「いや、屈んだりしたら引き摺りそうですけど……」

 膝下まであるそのお洒落なコートでどうやったら裾を引き摺らないのか樹里には分からなかった(彼女は学校指定の腰丈のコートしか持っていない)が、紫音が上品に屈んだところで無様に裾を引き摺るようなことはなかった。

「ほらね? 屈み方に気をつければ問題ないのよ」

「そういうものなんですね。勉強になります」

「そこを勉強してくれる必要はないのだけど……」

 苦笑いしながら作業に戻る。ふと机の足元に気になるものを見つけて顔を近づけた。

「これは……タバコの灰……でもこの家に灰皿は見当たらない。つまりこの灰は被害者のものではない。じゃあ犯人の落し物ね」

 ブツブツと何事か呟きながら物色を続ける。その光景を見ているだけの樹里には何も分からないが、紫音は何か見つけたらしい。

「灰皿を持参した? 吸わない人の前で吸うことも信じられないけど、ここに灰がある以上はそうなんでしょうね。なら犯人は喫煙者で確定」

 取り敢えず予想をつけていく。まだ具体的な犯人像は浮かび上がらない。

「それからこっちは……開かれることが決まったとかいう個展のチラシが一枚。一枚だけ? 玄関にはたくさん積み上げてあったけど、それとは別物。これは一枚しかない。するとこれは……」

 突如暫く黙考した後、紫音はすっと立ち上がり、呆然としている礼堂巡査に向かって、

「ちょっと資料貸して貰えるかしら?」

 と尋ねた。

「無論です。解けそうですか?」

 請われた資料を渡しながら問うと、

「犯人ならもう分かったわ。あまりにも簡単ね」

 と資料をめくりながらサラッと答えた。

「は? 今なんと……?」

「犯人が分かったって言ったのよ。よく聞いてなさい、礼堂巡査。ボヤボヤしてる時間はないわよ」

 いつもより厳しい声で叱責する。

「それで、その肝心の犯人というのは……?」

山脇やまわき総二郎そうじろう。第一発見者、被害者の友人で、個展のお祝いに来たはずの人物よ。資料によれば、動機の点から犯行の可能性は低いとされているけど、そんなことはないわよ。もっとも、お金目的と考えた時点で警察の負けなのだけどね。犯行当時のアリバイはなし。一人暮らしだから家にいたと言えば誰もそれを証明出来ないからね。そしてその彼、かなりのヘビースモーカーのようね。事情聴取した刑事は『こちらに断りなくタバコを取り出す。まるで中毒者のよう。曰く、被害者邸においても特別に喫煙を許されているらしい。しかし、受け答えは冷静ではっきりしていて、自身のアリバイがないことを寧ろ誇らしげに語る』様子だったと言う。これはなかなか不自然だよね。アリバイはないけど、やましい事はありません、と主張したいのがひしひしと伝わってくる。そしてそれが嘘であることもね」

「えぇっと……結局、証拠は何なんでしょう……? それがないと我々も逮捕状請求の決め手に欠けますので……」

「証拠? ここにあるわ」

 紫音は個展のチラシを顔の前でひらひらと振った。

「これ、玄関に山積みになってたのと同じものなのだけど、若干違いがある。玄関に置いてあるのは、会場の地図が表にはなかった。きっと裏面にあるんでしょうね。でもこれは、。チラシというか、ポスターかしら。つまり、犯人が持参したものの一つってこと。恐らく犯人も玄関のチラシには気が付いているでしょうけど、デザインの違いには気が付かなかったんでしょうね」

「しかし、それだけで山脇氏が犯人だと決めるわけには……」

「そうよね。でももう一つあるわよ。状況証拠だけど。山脇さんとかいう人、暫く被害者と会ってなかったそうじゃない? でもさ、それは嘘よ。だって彼、特別にこの家での喫煙を許されているのでしょう? でもここにはタバコの灰が落ちているのよ。つまり、ということ。なのに最近会ってないと言っている時点で黒なのはほぼ確定よ」

 語りながら居間の入り口まで戻ってくる。

「さあ、私の仕事は終わりね。後は任せたわよ、礼堂巡査」

そのまま真っ直ぐ玄関へ向かう。置いて行かれては大変なので、樹里は慌てて追いかける。

「は、ありがとうございました」

 直立不動の体勢で敬礼する。ぼーっとしているように見えてもそこはさすが警察官である。

「もうおしまいですか?」

「うん。だからさっさと帰るわよ、樹里ちゃん。若菜警部と話さなきゃいけないこともあるからね」

 帰り道、あまりにもあっさり終わったため驚きを隠せない樹里だったが、父親と話すと聞いて即座に冷静になった。樹里にとって父親は、不要なら話したくないと思うくらいには苦手な人だった。

「それにしても、あっけなく終わりましたね」

「まぁ、簡単な事件だったからね。これが本当に何の手掛かりも残していなかったり、魔術を使ったものとかだったら私でもちょっと苦戦することになるけどさ」

───魔術?

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