障害者施設
和田いの
第1話 集結
病院からの帰り道、佐藤 欣也は明かりのほとんどない路地裏を歩いていた。
背後から肩に手を乗せられる。急な出来事に佐藤は反射的に振り向き、目を見開いた。
そこには筋肉質な男が2人立っている。
咄嗟に体を捻り右足をあげ、少しでも遠くへ逃げようとした。
しかし、腕を掴まれる。
「うわあああああああああああ!!!」
精一杯の力で叫んだ。
顔を殴られ、腹を殴られ、だんだんと意識が遠のき、視界が暗転した。
しばらくして体の揺れで目を覚ますと、何かに腰を掛けていた。目の前は真っ暗で頭はぼーっとしている。
ガシャン
無意識に腕を動かそうとすると腕から金属音が鳴り、腕が動かない。
そこで意識がはっきりとする。佐藤は自分の身に起こった出来事を思い出した。
――――わからない意味がわからないあれは誰どういうことこれはなに腕が動かない目が見えない死ぬころされる殺される殺される......
ガシャンガシャン
もう一度腕を動かそうとするが、ほとんど動かせない。
彼は強迫性障害だが、それとは関係なくパニックに陥っていた。
プニッ
左側にある何かに触れた。
その何か、その人間は佐藤の出した金属音で目を覚ましていた。
佐藤と同じ状況のその人物は、なにも状況が掴めない暗闇の中、
「ハッハッッ!!」
急に大きな声で笑った。
話したこともないのに佐藤にはそれが誰なのか、はっきりとわかった。
「ごりくん!!!??」
◇ ◇
30分後。
佐藤の右隣にあったドアが開かれた。
「目的地に到着しました」
聞いたことのない男の声が聞こえる。
佐藤はあれからしばらく周りに呼びかけてみたが、どんなに話しかけても何も返事がなかった。
佐藤を無視し続けていた謎の男が急に話し出した。
「ついてきてください」
佐藤は腕を掴まれ強く引っ張られる。
抵抗しても無駄だと感じ、腕を掴まれたままついていく。ごりくんも同じように隣を歩かされていた。
2人は目隠しと手錠をされたまま歩き続ける。扉を開ける音が聞こえたことと床の硬さの変化から建物の中に入ったことが分かった。いくつか扉の開く音を聞きながら歩き、また扉が開いた。今までとは違い、その奥からたくさんの声が聞こえてくる。
「また誰か来た」
「あ、佐藤!!」
「ごりくんもいるじゃん」
佐藤とごりくんは目隠しが外され、視界が開けた。
そこには写真やビデオ通話で見覚えのある人達が手錠をされて立っていた。
すると、佐藤の手を掴んでここまで連れて来た男が喋り出す。
「皆さんには、この施設で40日間を過ごしてもらいます。それではそれぞれの部屋に案内します。佐藤欣也さんはこちらへ」
従わなければ何をされるか分からないと感じ、佐藤は黙ってついていく。
部屋がいくつも並んでいて男はその中の一つに入っていった。
佐藤は部屋に入って見渡す。
ベッド、クローゼット、テーブル、ティッシュ、ゴミ箱。テーブルの上には鍵と紙が置いてある。
「では失礼します」
男は部屋から出ていった。
1人きりになった佐藤は、一度心を落ち着かせながら考える。なぜみんながいたのか、なんのために集められたのか。
しばらく考えているとテーブルの上に何か紙が置いてあったことを思い出した。とりあえずそれを拾い文を読む。
そこにはこう書いてあった。
この屋敷には、人を殺した者が1人います。3日後その人に投票してください。
ミッションを達成できなかった場合、あなたを殺します。また、あなたが1票でも投票された場合も失敗です。
盗聴器や監視カメラは至る所に仕掛けてあります。
隣に置いてある鍵はマスターキーです。外に繋がる扉以外であれば全ての扉の鍵を開けられます。
意味がわからなかった。これを書いた人は本気で言っているのか、なんのためにこんなことをしているのか、こんなことをしてなんになるのか。それからは何も考えたくなくなり、しばらく立ち尽くしていた。
なにか臭い匂いがする。
さっきまで放心していたからか気付かなかった。
ふとクローゼットが目に入り、近づいてみる。
ここからの匂いだ。
好奇心か、なにも考えたくないからか、自然とクローゼットを開けた。
そこには、包丁が刺さった母親の死体があった。
障害者施設 和田いの @youth4432
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