第11話

その後の動きとしては、ひとまず街で簡単な武器を入手し、今現在小谷家がどう言う動きをしているかと言う情報を集めて回ることにした。

そして全てが終わり、小谷家に乗り込む準備が整った頃にはひと月ほどの時間が過ぎていた。私の手元にあった薬の数は残り1つとなった。

そして今から出発するにあたり、0になる。

今はまだ、死ねない。

氷河の願いでもある氷夜の願いを叶えるまでは…。

そして、決行の時間がやってくる。

暗闇に乗じて街の中に大きくそびえる小谷家の中に2つの影が侵入していった。

小谷家の中にあるトラップを回避するのは簡単だった。

氷夜の能力で時を止め、その間に進む。

その繰り返しだった。

しかし、その快進撃は見覚えのある氷の弾丸によって阻まれることになる。

姿を見たのは初めてだな、と冷静な頭で実湖は思った。

「そちらから出向いてくれるとは、殺しに行く手間が省けましたね。氷夜、最後に言い残したい事はあるかい?」

丁寧な言葉遣いだが、ひしひしと殺気が伝わってくる。ピストルの形に構えたあの指から氷の弾丸を発射しているのだろう。

「生憎とまだ死ぬ気はねぇな、紫水こそ自分から殺されにきたようなもんだって気がついてないのか?」

氷夜は口を歪めて皮肉げに笑った。

氷夜の兄、紫水しすいは不愉快そうに眉をひそめた。

「氷夜、君、まさか僕を殺す気なのかい?優れた能力を持って生まれてきたというだけで何もせずにのうのうと生きてきただけのが、この僕を倒せるとでも?」

なるほど、世界的に見ればレアな能力である氷の弾丸にを操る能力であってもそれよりも希少な能力を持つ者がいれば霞んで見えてしまう。紫水は氷夜にかなりの劣等感を抱いたことだろう。そしてそのストレスのはけ口として氷野に暴力を振るっていたのだろうと予想はついた。しかし、それは私には関係のない話だ。

「私たちは世界から能力を無くすためにフォーチュナーに会いに行く、だからそこをどいて。どいてくれないのなら、殺すしか無くなる。」

私が声を発したことでようやく紫水は私の存在に気がついたようだった。

「氷夜がもう1人?これはなんの冗談かな?氷夜。手足を撃ち抜いた後に母さんの前でゆっくりと説明してもらおうか。」

そう言った直後、紫水は氷夜と実湖に向けて弾丸を発射してきた。

それがスタートの合図だった。

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