第5話

「なっ…!!??」

「どうやら追っ手のようだね、どちらのかはわからないが。」

そう言った直後に再び降りかかる氷の弾丸が氷夜の太ももを掠り裂傷をつくる。

「ぐっ…」

痛みによって鈍い声をあげた氷夜を担いで裏路地を抜けていく。

後ろから追ってくる者たちが見える気がするが振り返らずに進む。

追っ手の気配が完全に消える頃には周りの風景はもう都市とは言い難くなっていた。

鬱蒼と生い茂る木々の中、どんどんと森の奥へと進んでいく。

少し開けた場所に出ると氷夜を降ろし、傷口に手を当て意識を集中させる。

自分の中のかが減っていく感覚と共に傷が塞がっていく。

「うっ…」

「傷が塞がった…」

人1人かかえて走っていた時には乱れもしなかった息が乱れているのを悟られないように呼吸を整える。

「一先ずは、撒けた、かな?」

「そう、だな。」

辺りを見渡し、人の気配がないのを確認してから草の上に2人は腰を下ろした。

「実湖、さっきは助かった。ありがとう」

「気にしなくていいよ、それよりさっきの氷の弾に見覚えは?」

氷を弾丸にして打ち出す能力は威力は高くレアな部類に入ると記憶している。

この世界は能力のある人間とそうでない人間がいる。能力を持って生まれてくる確率は0.000001%、つまり百万人に1人という希少さから私達が生み出されらことになったのだ。

そしてその中でもレアな能力持ちの人間ということはかなり人は絞られてくるはずだ。

私の居た研究所にそのような能力のあるものはいただろうかと私が考えを巡らせていると氷夜が絞り出すような声で言った。

「俺の、兄貴の、能力だ。」

なるほど、どうやら氷夜側の追っ手だったらしい。

しかし、あの弾丸には迷いが一切なかった。

確実に殺す気だったということだ。

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