第二十六話:「The King of Knights」
この家にお世話になり始めて一週間と少しが経ったある日の朝、レヴィア先生との勉強中のこと。レヴィアが突然、
「今日の午後は、お父様との鍛錬は無かったわよね?」
と聞いてきた。
「うん、今日は無いけど......どうしたの?」
聞いてみれば、今日の午後から王都の大広場では、以前のお勉強会で話題に出たアーサー王とランスロット卿を題材にした王立劇団の劇「騎士の王」が催されるから見に行かないか、とのこと。
勿論断る理由も無いし、話に聞いてから興味があったので一も二もなく頷いたのだった。
そうして今、広場の大きな仮設テントの中に設けられたドーナツ状の座席には、空いているスペースが全く見つけられない程に、老若男女問わずに沢山の人が詰めかけていた。
一応ラースも誘ったのだが、やはり来なかった。
ここ最近はますます出不精に磨きがかかっているようだ。
なにはともあれ、ここに来ている誰もがこれから始まる劇を楽しみにしているようで、皆明るい顔をしている。
僕の隣に居るレヴィアも例に漏れず、来ることが決まった時からずっと分かりやすくご機嫌な調子だ。
「凄い人だね......。」
「それはそうよ、この国一番の人気劇団の、一番人気の演目よ?」
「らしいね。聞いてた以上の人気だな、と思ってさ。」
そんな雑談をしながら待っていると、突然何処からか勇壮な音楽が流れてきて、その音楽とともに騎士と竜がステージへ躍り出た。
「
「────偉大なるオリジンよ!......どうして、どうしてそこまでして、そのような御姿になられてまで戦われるのですか!?」
「お主は......」
「私は、アーサーと申します。
何故貴方様は、我が身も顧みず、そうして傷を負って尚戦うのですか!?」
「......何故、か。そうだな......お前達からすれば、疑問に思って当然のことだ......。
敢えて言葉にすれば、贖罪と愚かな自己満足、といったところか......。
然しそれは正しくあるまい。
そう......私はお前達、人の子らが好きだ。だから守る。
それだけのことだ。」
「それが、理由なのですね......。そうまでして我々を守り戦うのは愛ゆえと......。
ならば我々も、力の限り貴方様を
その無償の慈愛に報いることが出来なければ、それは唯、庇護されるだけの赤子です!!それでどうして貴方様方を、竜を“友”と呼べましょうか!?
我ら人の子は古来より、竜と共に生きてきました。そして今や、少なくとも我らにも同じ竜の血が流れる以上、ただ愛されるだけの人にあらず。
半端なれども同じ竜の端くれとして、少しでもお力になりましょう!!」
「......覚悟は固いようだな......。ではせめて、私から餞別を贈ろう......。
......然し、これを受け取ればもう後には退けぬ。これは危険な力だ......。
これは
......ときに汝を護り、ときに汝に力を与え、またときに、汝の命を脅かそう。
試すようだが、この力の
さすれば汝は我らと共に往けるだろう......。」
────そうして、アーサーを始めとする龍の洗礼を受けた十一の“龍騎士”達が生まれました。
彼らと後に加わるランスロット卿の十二人が、初代“護龍騎士団”の騎士達です。
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