第二十四話:師匠

 あぁ......流石に敵わなかったな。

 そう簡単にバルクさんに勝てるだなんて自惚れてたつもりはなかったけど......それでもやっぱり悔しい。

 今までとは全く勝手が違うとはいえ、対人の訓練でこんなにもいいようにしてやられたのはいつぶりかだろう。

 バルクさんの戦いぶりは、「堅い」の一言。

 一挙一動に隙が少なく、立ち回りは巧みだ。こちらのフェイクにも全然乗って来ないその鋭い戦勘にもしてやられた。

 あの肩書きも伊達ではないってことかな。


 なんてことを考えながら鍛錬場に仰向けに寝そべって息を整えていると、ふと影が差した。


「やぁホムラくん、大丈夫だったかい?」


 案の定、声を掛けに来たのはバルクさんだった。


「あ、はい。全然大丈夫です。」


「ほんとに?すっごい勢いで堕ちてきたわよ、君。」


 あんまり寝ていたから心配してくれたのか、木陰で見ていたレヴィアも近くに来ていたようだ。


「うん、ほんとに大丈夫。僕も結構頑丈なんだよ?

 ただ、久しぶりに全然敵わなかったのが少し悔しくって。」


 笑顔で答えると、それで納得してくれたようだ。


「久しぶりにというと、やっぱり何処かで訓練は積んでいたんだね?」


「えぇ、まぁ......それなりに。」


「うん、いい動きをしていたからね、そうじゃないかと思ったんだ。」


「そうね、凄かったわ。よく手加減してるとはいえ、あのお父様とあんなにやり合えるわねって、感心しちゃったわ。」


「いや......それほどでも。」


 実際、手も足も出なかった様なものだったし......。

 と思っていると、バルクさんが苦笑しながら、


「ついつい楽しくなっちゃってね、実はドラゴニティを使った辺りからはあんまり手加減出来てなかったと思うんだけど......。」


 なんて宣った。気を遣ってくれたのかな。


「それで、一通りやってみた感じ......ホムラ君、君は恐らく、体術よりも竜力の方に重きを置いた戦いを得意としてるみたいだね?」


「はい、どちらかと言えば、そうですね。」


 実際今は無き相棒​​......〈黒飛竜ワイバーン〉は、何より機械仕掛けの体だったから、生粋の竜と肉弾戦なんかそうそう出来る訳もなく。

 いつもは竜爪機構ブレードで急所を狙って強襲、それで仕留められないか、それが困難な時は僕の竜力を増幅する竜吹機構ブレスで焼き尽くしていた。

 だから、僕の〈ワイバーン〉のメインウェポンは僕自身の竜力だったとも言える。


「それであれだけ出来るなら大したモノだけど......ドラゴアーツも学びたいかい?あれには竜力と併せて使うような応用技術もあるから無駄にはならないだろうし、最低でも試験までの間に基礎くらいまでは修めておいた方がいいだろう。私の手の空いた時でよければ教えるよ。」


「それは有難いです。ぜひお願いします。」


「分かったよ。じゃあ早速だけど、今打ち合ったのを元に授業しようかな。

 まず初めに............」


 こうして、バルクさんに時間のある時は竜闘術ドラゴアーツを教わるようになった。

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