第十七話:気になったこと

「......と、まぁそんな感じね。

 流れで三冊目、「護龍学」のさわりの本にまで行ってしまったけれど、ちなんと解ったかしら?」


「ああ。とても解り易かったよ。

 ......でもそうだな、竜と龍の違いは分かった。けど龍とドラゴンは?」


「んー、それはあくまで人間側の呼び分けかしらね。

 人を襲うのが龍、その子供が竜。人と友好的なのがドラゴン、みたいな。」


「なるほど。だから悪で二通りの呼び名なのか。」


「そ。他には?」


「なら......今の護竜騎士団と、アーサー王の......千年前の護龍騎士団、あとついでに護龍学で使われるのが竜と龍で違う字だったのは?」


「それはさっきの話にもあったけど、今の護“竜”騎士団の主な活動が幼“竜”ドラゴンチャイルドの保護と同時に友誼を結ぶことにあるから、そっちが変わったのね。」


「ふむ、そうなんだ。」


「昔の護“龍”騎士団は戦う龍の負担を減らすことが目的だったから......時代の変化とその名残り言えるかもしれないわね。

 あとついでに「護龍学」の表記が今も昔も変わってないのは、最近は竜の保護が重視されるようになったとはいえ、それらの活動も全て、ひいては龍の為でもあるからね。」


「そうか、納得したよ。」


 取り敢えず少し引っ掛かったところを聞いてみたが、そうか。

 龍と築いた千年の歴史、か......。

 しかもその守護龍が、あの「ディスガイア」の父龍だって?


「本当に......面白いな。」


「あら、歴史のお勉強はお好き?」


 知らず、声が漏れたらしいのをレヴィアに拾われた。


「いや、ただの独り言だよ。

 俺が堕ちてきてから見て知った何もかもが俺の故郷とはあまりに違くて、それが面白くて仕方ないんだ。

 もちろん、優秀な先生のおかげで歴史の勉強も楽しませてもらってるよ。」


「そう?それは良かったわ。

 それにしても貴方の故郷ね......私興味あるわ?」


「そんなにいいとこじゃないよ、知らない方がいい。

 どうしても気になるなら、いつか俺の気が向いたらね。」


 本当に......知らない方がいい、あんな地獄は。


「そ、そうなの?......分かったわ、もう聞かない。」


「ああ、済まないね。」


 故郷のことを話したがらないのは少し失礼だったかもしれないが......これは黙っておきたい。




 その後も、レヴィアはたわいない話に絡めながらこの国について色々な話を聞かせてくれて、気付けば日が傾いて来ていた。


「あら、もうこんな時間なのね。そろそろ夕食だわ。」


 その声で初めて、意外と勉強に没頭していたことに気が付いた。


「そうか、今日はありがとう、レヴィア。楽しく教えてくれて。」


「いいえ、私の勉強にもなるし、いいのよ。

 明日からは護龍学も本格的に始めていきましょう。王国史と護龍学は関わりが深いから、王国史の一部と思ってしまってもいいかもしれないわね。」


 そんなふうに話しながら食堂に着けば、もうバルクさんが来ていた。


 バルクさんお手製ではないらしかった夕食も、しかしやはり美味しかった。

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