第十四話:意外な一面

 レヴィアと共に屋敷に戻れば、バルクさんが既に広い食堂で僕達を待ち構えていた。


「お、来たか。

 朝食は皆に任せっきりで特別な用意をする暇がなかったからな......。

 昼食は歓迎の意味で力を入れてみたんだ。」



 ......エプロン姿で、厨房と繋がるカウンター越しに。



「あら、今日はお父様の手作りなのですか?!」


「ああ、少しだけだけどね。

 ......ホムラ君、そんなに意外だったかい?」


 ......どうやら顔に出ていたようだ。


「ええ、まぁ。......少しだけ。」


「お父様手作りのご料理はとっても美味しいのよ?

 あんまり頻繁には作れないんだけど、仕事を盗られちゃうからそれでいいんだって皆言ってるわ。

 それに私、偶に食べるお父様のお手製料理が好きなの。」


「それは期待出来ますね......。」


「ははは、腕によりをかけているよ。

 もうすぐだから、先にコレをテーブルに運んでおいて貰えるかな?」


 そう言ってバルクさんがカウンターに置いた料理は、俺でもそうと分かるほどに、どれも見るからに手が込んでいて期待が膨らんだ。


 ......ただし、美味そう。としか分からなかったが。


 とりあえず、頼まれた皿を机に並べていると、


「さぁ、出来たよ。」


 と自らメインらしき大皿を運んでくるバルクさん。

 その大皿には、こんがりと焼けた巨大な肉の塊が鎮座していた。


「これはこの辺りの特産でね、「レム牛」という大きな牛なんだ。

 余りに大きくて昔は狩るのが大変だったから、もし狩ることが出来ればいくつもの村で分け合い、みんなから感謝されるような貴重な獲物でね。

 掛かる労力の大きさと、獲物の大きさから「龍への供物リェムリング」が語源になったとか。」


「流石学園長先生、博識なんですね。」


「もう、お父様!私が教えようと思ってたのに!」


「おや、それは悪いことをしたようだね。

 どうかいっぱい食べて、機嫌を直してもらえないか?」


「お父様ったら、私が別に怒ってなんてないこと分かってるでしょう?」


「ハハハハ......ああ、もちろんさ。ちょっとした冗談だよ。

 ......それでは頂こうか。どうぞ召し上がれ。」




 そして至福ひるげの時間が終わると、余韻もそこそこにレヴィアとのお勉強会が始まったのだった。


 ......それと、この国の民は殆どが竜/龍人ドラゴニュートで長生きだとは聞いていたが、同時に健啖家でもあったようだ、まる。

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